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歩く速さは「体力の通信簿」?歩行速度と健康寿命の深い関係【札幌・琴似】

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歩く速さは「健康の通信簿」?歩行速度と健康寿命の深い関係【札幌・琴似】

歩く速さは「健康の通信簿」?歩行速度と健康寿命の深い関係【札幌・琴似】

2026/08/17

 

「正しく歩く」シリーズ 第3回

第1回では「正しく歩くとはどういうことか」、 第2回では「なぜ年齢とともに歩幅が狭くなるのか」を解説しました。

▶ 第1回|歩き方は「健康の通信簿」?正しく歩くということ
▶ 第2回|なぜ年齢とともに歩幅が狭くなる?「前に足を出す」だけでは歩幅は広がらない

「歩けているから、まだ大丈夫」

本当にそうでしょうか?

同じように歩けているように見えても、

以前はスタスタ歩いていた人が、
少しずつゆっくりになってきた。

横断歩道を渡るのに余裕がなくなった。

家族と一緒に歩くと、 少しずつ後ろに遅れるようになった。

こうした「歩く速さの変化」には、 身体の状態が表れている可能性があります。

歩行速度は、単なる「歩く速さ」ではありません。
筋力・バランス・関節・神経・心肺機能など、 全身の能力を使った結果として表れる数字です。

2025年、48研究をまとめた最新解析が示したこと

2025年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、 48研究を統合し、 普段の歩行速度と死亡、心血管疾患、がん、2型糖尿病との関係が調べられました。

最も歩行速度が速い人たちと比較すると、 最も遅い人たちでは、

  • 全死亡:1.49倍
  • 心血管疾患発症:1.20倍
  • 2型糖尿病発症:1.31倍

という関連が報告されました。

さらに歩行速度が0.1m/秒速いことは、 心血管疾患発症リスクが約4%、 2型糖尿病発症リスクが約3%低いことと関連していました。

ここで大切なのは、「速く歩けば病気を防げる」と断定することではありません。
これらは主に観察研究から得られた関連です。 歩行速度が速い人ほど、筋力や心肺機能、身体活動量など、 健康に関係するさまざまな能力が保たれている可能性があります。

だからこそ歩行速度は、 身体全体の状態を映す一つの指標として注目されています。

なぜ歩行速度が健康状態の指標になるのでしょうか?

歩行速度が重要な理由

歩行速度は、脚の筋力だけではなく、 バランス能力、関節機能、神経・感覚機能、心肺機能など、 複数の身体機能を総合した結果として表れるからです。

例えば、少し速く歩こうとすると、

  • 一歩を支える筋力
  • 片脚で身体を支えるバランス
  • 身体を前へ送り出す足首の力
  • 脚を素早く切り替える神経機能
  • 運動を続ける心肺機能

などが必要になります。

どこか一つの機能が低下しただけでも、 身体は転ばないように歩幅を小さくしたり、 速度を落としたりします。

だから歩行速度は、 単なる脚力テストではなく、 「全身の余力」を見る指標 として考えられているのです。

歩行速度は「第6のバイタルサイン」とも呼ばれる

医療の世界では、 体温、脈拍、呼吸、血圧など、 身体の状態を判断する重要な指標を「バイタルサイン」と呼びます。

歩行速度についても、 高齢者の身体機能や将来の健康状態を捉える重要性から、 「第6のバイタルサイン」と表現されることがあります。

2024年に発表されたシステマティックレビューでは、 地域で生活している高齢者の歩行速度検査について 95本の研究が検討されました。

その結果、 通常歩行速度・最大歩行速度ともに一定の信頼性が確認され、 通常歩行速度については妥当性を支持する結果も示されています。

特別な大型機器を使わなくても、 一定距離を歩く時間を測るだけで評価できます。

これほど簡単な検査でありながら、 身体機能に関する多くの情報を得られることが、 歩行速度の大きな特徴です。

「0.8m/秒」が一つの目安として使われる理由

高齢者の身体機能評価では、 0.8m/秒以下という歩行速度が 一つの目安として使われることがあります。

2025年に医学誌 Age and Ageingに発表された研究では、 60歳以上の高齢者を最大8年間追跡しました。

研究では、 基本的日常生活動作(BADL)について3,637人、 手段的日常生活動作(IADL)について3,696人を解析しています。

その結果、 歩行速度0.8m/秒以下で示される低身体機能は、 フレイルやサルコペニアのさまざまな構成要素の中でも、 将来の日常生活動作低下を捉えるうえで非常に有用でした。

0.8m/秒とは?

例えば4mを5秒で歩くと、歩行速度は0.8m/秒です。

歩行速度 = 歩いた距離 ÷ かかった時間

ただし、 0.8m/秒を「健康・不健康の境界線」と考えるのは適切ではありません。

測定距離や方法、年齢、身長、疾患などによって結果は変わります。

あくまで多くの研究や診断基準で使われている 一つの参考値として考えることが大切です。

2026年の日本の研究では「普段の生活での速さ」にも注目

さらに興味深い研究が、 2026年に日本から報告されています。

国立長寿医療研究センターなどの研究グループは、 平均70歳の高齢者1,631人を対象に、

  • 検査室で測定した歩行速度
  • 加速度計から推定した日常生活での歩行速度

の両方を測定し、 その後5年間の要介護発生を追跡しました。

その結果、 検査室で測った歩行速度だけでなく、 実際の日常生活での歩行速度も、将来の要介護発生と独立して関連 していました。

「検査のときに速く歩けるか」だけではなく、
普段の生活で実際にどのくらいの速さで歩いているか。
そこにも将来の身体機能を考えるヒントがあるということです。

歩く速さは「脳」とも無関係ではない

歩行速度と関係するのは、 筋力や心肺機能だけではありません。

2025年には、 認知症のない地域在住高齢者を対象に、 歩行速度と認知機能を繰り返し評価した前向き研究が報告されています。

最終的に459人、平均年齢74.5歳を解析した結果、 遅い歩行速度は、その後の全般的認知機能、 記憶、言語流暢性、実行機能などの低下と関連していました。

一方で、 認知機能が低いことも、 その後の歩行速度低下と関連していました。

つまり研究では、 歩行と認知機能が双方向に関係している可能性 が示されています。

歩くという動作には、 周囲を見る、状況を判断する、姿勢を調整する、 次の一歩を計画するといった脳の働きも必要です。

「歩くこと」は、 思っている以上に複雑な全身運動なのです。

では、いつも速く歩けばいいのでしょうか?

ここで、 「歩行速度が重要なら、とにかく速く歩けばいい」 と思うかもしれません。

しかし、それも少し違います。

大切なのは、 常に速く歩くことではなく、必要なときに速度を上げられる能力があること です。

例えば、

  • 横断歩道を渡る
  • 人を避ける
  • 電車やバスに少し急ぐ
  • バランスを崩したときに素早く一歩を出す

といった場面では、 普段より速く動く能力が必要です。

目指したいのは「いつも全力で歩くこと」ではありません。
普段は無理のない速度で歩きながら、 必要な場面では歩幅やテンポを上げられる 身体の余力を残しておくことが大切です。

歩行速度は「歩幅 × テンポ」で決まる

歩く速度が遅くなったときには、 単に「もっと速く歩いてください」と言えばよいわけではありません。

歩行速度には、 大きく分けて

歩幅 × 歩くテンポ(ケイデンス)

が関係しています。

つまり歩行速度が低下している場合、

  • 歩幅が小さくなったのか
  • 脚を切り替えるテンポが遅くなったのか
  • その両方なのか

を考える必要があります。

第2回で解説したように、 歩幅が小さくなる背景にも、 足首、股関節、重心移動、バランスなど 複数の要因があります。

重要なのは「今の数字」だけではなく「以前との変化」

歩行速度を考えるうえで、 もう一つ大切な視点があります。

それは、 一度測った数字だけで判断しないことです。

2024年の研究では、 平均74歳の3,048人について、 6か月ごとに歩行速度を測定し、 最長14年間追跡しました。

その結果、 歩行速度が高いことだけでなく、 歩行速度が時間とともにどう変化しているか も生命予後と関係していました。

つまり、

「他の70歳より速いか、遅いか」だけではなく、
「半年前、1年前の自分より遅くなっていないか」 を見ることが重要です。

こんな変化はありませんか?

  • 家族と歩くと遅れるようになった
  • 横断歩道を渡るのが以前より大変になった
  • 少し急ごうとしても速度を上げられない
  • 歩幅も以前より小さくなった
  • 長く歩くと速度が大きく落ちる
  • 半年~1年前と比べて歩くのが遅くなった気がする

こうした変化がある場合、 単に「もっと歩きましょう」とするだけでなく、

筋力なのか、
バランスなのか、
歩幅なのか、
関節の動きなのか、
持久力なのか。

なぜ歩行速度が低下しているのかを確認することが大切です。

歩行速度は「健康の通信簿」の一つ

今回紹介した研究をみると、 歩行速度は、

  • 生命予後
  • 心血管疾患
  • 2型糖尿病
  • 将来の日常生活動作低下
  • 要介護発生
  • 認知機能

など、さまざまな健康指標との関連が研究されています。

歩く速さは、「脚が速く動くか」だけの数字ではありません。

筋力、バランス、関節、神経、心肺機能など、
さまざまな身体機能を使った結果として表れるものです。

だからこそ、
「以前より歩くのが遅くなった」という変化を見逃さないこと。

それが、身体の変化に早く気づくきっかけになります。

では、実際に「歩くこと」は、 身体にどのような健康効果をもたらすのでしょうか?

次回は、 歩数、心血管疾患、糖尿病、認知症、死亡リスクなどの研究から、 「歩くことそのものが健康に与える影響」を詳しくみていきます。

次回 第4回

歩くことは身体と脳をどう変える?「1日1万歩」にこだわらなくていい理由

何歩歩けば健康によいのでしょうか?
歩くことで、心臓・血管・血糖・脳・寿命にはどのような変化が起こるのでしょうか。
最新の大規模研究・メタ解析をもとに解説します。

歩行速度についてよくある質問

Q. 高齢者はどのくらいの歩行速度が必要ですか?

研究や身体機能評価では0.8m/秒以下が低身体機能の一つの目安として使われることがあります。 ただし、年齢、身長、疾患、測定条件などによって異なるため、 0.8m/秒だけで健康状態を判断することはできません。 現在の数値とあわせて、以前からの変化を見ることが重要です。

Q. 歩く速度が遅いと寿命が短くなるのですか?

歩行速度が遅い人ほど死亡リスクが高いという関連は、多くの研究で報告されています。 ただし「遅く歩くこと自体が寿命を短くする」と証明されたわけではありません。 歩行速度には筋力、心肺機能、疾患、身体活動量など多くの要因が関係しています。

Q. 健康のためには速く歩いた方がよいですか?

常に速く歩く必要はありません。 重要なのは安全に歩けることに加えて、 必要な場面では普段より歩幅やテンポを上げて 速度を変えられる身体能力を保つことです。

Q. 歩行速度はどうやって測りますか?

一定距離を歩くのにかかった時間を測り、 「距離(m)÷時間(秒)」で求めます。 医療・研究では4mや10mなどさまざまな方法が用いられるため、 経時的に比較するときは、できるだけ同じ条件で測定することが大切です。 転倒の不安がある方は、一人で無理に測定せず専門家に相談してください。

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この記事を書いた人

成田 悟志(理学療法士)

株式会社プライズライフ 代表取締役/リハビリジム プライズネス代表。
医療・リハビリの臨床経験をもとに、 歩行、筋力、介護予防、健康寿命について、 医学的根拠を踏まえてわかりやすく情報を発信しています。

参考文献

  1. Wu Q, Li G, Zhang X, et al. Systematic review and meta-analysis of the association between usual walking speed and all-cause mortality and risk of major non-communicable diseases. J Sports Sci. 2025;43(14):1364-1377.
    PubMed
  2. de Souza AF, et al. Low gait speed is better than frailty and sarcopenia at identifying the risk of disability in older adults. Age Ageing. 2025;54(4):afaf104.
    PubMed
  3. Shimada H, Lee S, Doi T, et al. Community Walking Speed as a New Predictor of Disability Incidence in Older Adults: A Prospective Cohort Study. Gerontology. 2026;72(4):279-288.
    PubMed
  4. Su YH, Chiou JM, Shiu C, et al. Longitudinal, Bidirectional Association between Gait Speed and Cognitive Function in Community-Dwelling Older Adults without Dementia. J Am Med Dir Assoc. 2025;26(5):105544.
    PubMed
  5. Perera S, Zhang X, Patterson CG, Boudreau RM. Serial gait speed measurements over time and dynamic survival prediction in older adults. J Nutr Health Aging. 2024;28(9):100330.
    PubMed
  6. Mehdipour A, Malouka S, Beauchamp M, Richardson J, Kuspinar A. Measurement properties of the usual and fast gait speed tests in community-dwelling older adults: a COSMIN-based systematic review. Age Ageing. 2024;53(3):afae055.
    PubMed

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