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第4回 歩くことは身体と脳をどう変える?「1日1万歩」にこだわらなくていい理由【札幌・琴似】

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第4回 歩くことは身体と脳をどう変える?「1日1万歩」にこだわらなくていい理由【札幌・琴似】

第4回 歩くことは身体と脳をどう変える?「1日1万歩」にこだわらなくていい理由【札幌・琴似】

2026/08/19

 

「健康のためには、1日1万歩歩きましょう」

一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

スマートフォンやスマートウォッチを見ると、 その日の歩数が簡単に分かる時代になりました。

しかし、

「今日は4,000歩しか歩けなかった」
「7,000歩しか歩けないから意味がない」
「高齢だから1万歩なんて無理」

と考えてしまう方もいます。

では、本当に「1万歩」歩かなければ健康効果はないのでしょうか?

最新の研究を見ると、答えは「いいえ」です。
1万歩に届かなくても、歩くことには十分な意味があります。

2025年、「7,000歩」が大きな注目を集めた

2025年7月、医学誌 The Lancet Public Healthに、 歩数と健康について非常に大規模な研究結果が発表されました。

この研究では、 57研究・35のコホートを系統的にレビューし、 そのうち31研究・24コホートのデータを使って 歩数とさまざまな健康状態との関係を解析しました。

対象となったのは、死亡だけではありません。

  • 心血管疾患
  • がん
  • 2型糖尿病
  • 認知症
  • 抑うつ症状
  • 転倒

など、幅広い健康指標が検討されました。

そして、 1日2,000歩の人と7,000歩の人を比較すると、 7,000歩の人では、

全死亡
→ 47%低い関連

心血管疾患の発症
→ 25%低い関連

2型糖尿病
→ 14%低い関連

認知症
→ 38%低い関連

抑うつ症状
→ 22%低い関連

という結果が報告されました。

ただし、数字の読み方には注意が必要です。

これらの結果の多くは観察研究に基づいています。
そのため、 「7,000歩歩けば認知症が38%予防できる」 という意味ではありません。

歩数が多い人ほど、もともと健康状態がよい、 社会活動が多い、食生活がよいなど、 ほかの要因が関係している可能性もあります。

正確には、 「7,000歩程度歩いている人では、さまざまな健康リスクが低い関連が認められた」 と考える必要があります。

健康のためには1日何歩歩けばよいのでしょうか?

健康のために必要な歩数は?

「必ず1日1万歩」という科学的な境界線があるわけではありません。 現在の研究では、歩数が少ない人でも今より歩数を増やすことに意味があり、 高齢者では6,000~8,000歩程度でも大きな健康上の利益と関連することが報告されています。

では「1万歩」は間違いなのでしょうか?

ここも誤解してほしくありません。

1万歩歩くことが悪いわけではありません。

体力があり、安全に歩ける方であれば、 1万歩という目標を持って歩くこともよいでしょう。

2025年の研究でも、 1万歩は活動量の多い方にとって 引き続き実行可能な目標であるとされています。

重要なのは、

「1万歩できなければ意味がない」 と考えないことです。

特に高齢者では、 2022年に15の国際コホート、47,471人をまとめた研究で、 死亡リスクとの関係は おおむね6,000~8,000歩程度まで大きく低下し、その後は緩やかになる 傾向が示されています。

若い人と高齢者では、 現実的な目標歩数も違って当然です。

2,000歩の人が3,000歩になることにも意味がある

歩数の研究で大切なのは、 「何歩から急に健康になる」という明確な境界線があるわけではないことです。

2023年に111,309人をまとめたメタ解析では、 1日2,000歩を基準とした場合、

  • 約2,500歩から全死亡
  • 約2,700歩から心血管疾患

について、統計学的に低いリスクとの関連が確認され始めました。

つまり、

今2,000歩しか歩いていない人が、
「1万歩は無理だからやらない」と考える必要はありません。

まず3,000歩へ。
そして4,000歩へ。

今の生活より少し身体を動かすことから始めればよいのです。

歩数についてさらに詳しく知りたい方へ
歩数と死亡リスクの関係についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
▶ 「1日1万歩」はもう古い? 最新研究が示す“本当に効く歩数”とは

歩くことは「心臓・血管」にどう影響する?

歩行は全身を使う有酸素運動です。

歩くことで心拍数が上がり、 筋肉へ酸素や血液を送る必要が生まれます。

これを繰り返すことが、 心肺機能や血管系への刺激になります。

歩行と血圧について調べたメタ解析では、 14の歩行介入試験をまとめた結果、 平均して、

  • 収縮期血圧:約3.1mmHg低下
  • 拡張期血圧:約1.6mmHg低下

が認められました。

興味深いのは、 この研究でも 「1万歩に達した研究」と「達していない研究」で血圧低下に明確な差はありませんでした。

一方で、 普段より歩数が増えたことは 収縮期血圧の改善と関連していました。

ここでも大切なのは、 絶対的な「1万歩」という数字より、 今より身体活動量を増やすことなのです。

歩くことは「血糖」にも影響する

歩行では、 太ももやお尻、ふくらはぎなど、 大きな筋肉を繰り返し使います。

筋肉は、身体の中でブドウ糖を利用する大切な組織です。

そのため、歩行は血糖コントロールとも関係します。

2026年7月に発表された最新のシステマティックレビュー・メタ解析では、 2型糖尿病患者483人、5つのランダム化比較試験をまとめ、 8週間以上の歩行トレーニングの効果を検討しました。

その結果、 歩行トレーニングによって、

HbA1c 平均 −0.48%

という改善が認められました。

研究数が5つとまだ少ないため、 今後さらに質の高い研究が必要ですが、 歩くことが糖尿病管理を補助する運動になり得る ことを示す結果です。

血糖が気になる方は「食後に少し歩く」という方法も

運動する時間帯についても研究されています。

2023年のシステマティックレビュー・メタ解析では、 食事と運動のタイミングが 食後血糖にどのような影響を与えるかが検討されました。

その結果、 食事前に運動するより、 食後に運動した方が食後血糖の上昇を抑える効果が大きい ことが示されました。

また、食後の運動は 食事から時間が経ってから行うより、 比較的早いタイミングで始める方が効果的 という結果でした。

血糖が気になるからといって、 食後すぐに激しい運動をする必要はありません。

体調や治療内容にもよりますが、 食後に軽く身体を動かす、少し歩く という習慣も、 日常生活に取り入れやすい方法の一つです。

糖尿病治療中の方は、薬の種類や低血糖リスクなどもあるため、 主治医の指示に従って運動してください。

歩くことは「脳」にも関係する

歩くことの影響は、 心臓や血糖だけではありません。

2025年の歩数に関する大規模メタ解析では、 1日2,000歩と比較して7,000歩では、 認知症リスクが38%低い関連が報告されています。

もちろん、 これは「歩けば認知症を38%予防できる」という意味ではありません。

しかし、身体活動と脳の関係は、 介入研究でも以前から研究されています。

有名なランダム化比較試験の一つが、 Ericksonらによる120人の高齢者を対象とした研究です。

参加者は、 ウォーキングを中心とした有酸素運動群と ストレッチなどを行う対照群に分けられ、 1年間運動を継続しました。

ウォーキング群では、 最終的に1回40分の歩行を週3回行っています。

その結果、 有酸素運動群では 記憶に重要な海馬の前方部分の体積が約2%増加し、 空間記憶の改善もみられました。

歩くことは「脚の運動」だけではありません。
心臓・血管を働かせ、筋肉を使い、 神経や脳も使う全身運動なのです。

歩数と「心の健康」にも関連がある

歩数と抑うつ症状の関係についても研究されています。

2024年に発表された 33研究、96,173人をまとめたメタ解析では、 1日5,000歩未満の人と比べて、 歩数が多い人ほど抑うつ症状が少ない関連がみられました。

さらに前向き研究では、 1日7,000歩以上の人は、 7,000歩未満の人より 新たな抑うつのリスクが低いことと関連していました。

1日1,000歩多いことも、 抑うつリスクが約9%低いことと関連していました。

これも因果関係を証明した結果ではありませんが、 日常的に身体を動かすことが身体だけではなく、心の健康とも関係している ことを示す興味深い結果です。

では、何歩を目標にすればよいのでしょうか?

ここまで読むと、

「結局、私は何歩歩けばいいの?」

と思うかもしれません。

しかし、 年齢、病気、痛み、体力、普段の活動量によって、 適切な目標は異なります。

そのため、 私はすべての人に一律に 「7,000歩」「1万歩」と設定する必要はないと考えます。

例えば、

普段2,000歩程度の方
→ まず3,000歩を目指してみる

普段4,000歩程度の方
→ 4,500~5,000歩へ少し増やしてみる

すでに7,000~8,000歩歩いている方
→ 無理に歩数だけを増やすより、歩行速度や筋力、バランス能力にも目を向ける

という考え方もできます。

大切なのは「1万歩」という数字ではありません。

今の自分より、少し身体を動かす。

そして、それを無理なく続ける。

健康のための歩行は、 そこから始めれば十分です。

ただし、「歩数」だけを見ればよいわけではありません

ここまで歩数の健康効果を紹介しましたが、 このシリーズでお伝えしてきた通り、 歩数だけが歩行能力ではありません。

例えば同じ5,000歩でも、

  • 以前より歩行速度が遅くなった
  • 歩幅が小さくなった
  • ふらつきが増えた
  • つまずきが増えた
  • 少し速く歩くことができなくなった

という変化があれば、 「5,000歩歩けているから大丈夫」とは言い切れません。

「歩く」という最も身近な運動を、もっと大切に

歩くことは、 特別な機械や場所がなくてもできる、 私たちにとって最も身近な身体活動の一つです。

そして現在の研究では、 日常的な歩数が多いことは、

  • 死亡リスク
  • 心血管疾患
  • 2型糖尿病
  • 認知症
  • 抑うつ症状

など、さまざまな健康状態と関連することが示されています。

さらに介入研究でも、 血圧、血糖、脳などに対する効果が報告されています。

1万歩歩けなくても大丈夫です。

2,000歩なら3,000歩へ。
3,000歩なら4,000歩へ。

まずは今より少し身体を動かすこと。

そして、 何歳になっても「歩ける身体」を維持すること。

それが健康寿命を考えるうえで、とても大切です。

しかし、ここで最後に一つ疑問が残ります。

「毎日たくさん歩いていれば、足腰はずっと大丈夫なのでしょうか?」

実は、 「歩くこと」と「歩くための能力を鍛えること」は同じではありません。

この違いが、 今回のシリーズで最後にお伝えしたい重要なポイントです。

次回 第5回・最終回

「毎日歩いているから大丈夫」は本当?何歳になっても歩き続けるために必要なこと

歩くことは非常に大切です。
しかし、歩行だけでは十分に鍛えにくい能力もあります。

筋力・筋パワー・バランス能力・歩行速度・歩幅などから、 「将来も歩き続けるために何が必要なのか」を考えます。

歩数と健康についてよくある質問

Q. 健康のためには1日1万歩必要ですか?

必ず1万歩歩かなければ健康効果が得られないわけではありません。 2025年の大規模メタ解析では、 1日7,000歩程度でもさまざまな健康指標で有意義な関連が示されています。 また、歩数が少ない人では今より少し歩数を増やすことにも意味があります。

Q. 高齢者は1日何歩くらいが目安ですか?

一律に決めることはできませんが、 過去の大規模研究では、高齢者では1日6,000~8,000歩程度まで 歩数が増えるにつれて死亡リスクが低くなる関連が大きくみられています。 体力や疾患、転倒リスクなどに応じて無理のない目標を設定することが重要です。

Q. 3,000~4,000歩しか歩けなくても意味はありますか?

あります。 研究では比較的少ない歩数からも健康リスクが低い関連が確認されています。 1万歩を目指して無理をするより、 現在の歩数から少しずつ活動量を増やすことが現実的です。

Q. 食後に歩くと血糖値に効果がありますか?

食後に行う身体活動は、 食前に運動する場合より食後血糖の上昇を抑える効果が大きいことが メタ解析で報告されています。 糖尿病治療中の方は、薬や低血糖の問題もあるため、 運動方法について主治医に確認してください。

Q. 毎日歩いていれば筋力トレーニングは必要ありませんか?

歩行は非常に大切な運動ですが、 筋力、筋パワー、バランス能力などを十分に維持するには、 歩行だけでは不足する場合があります。 詳しくは第5回で解説します。

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この記事を書いた人

成田 悟志(理学療法士)

株式会社プライズライフ 代表取締役/リハビリジム プライズネス代表。
医療・リハビリの臨床経験をもとに、 歩行、筋力、介護予防、健康寿命について、 医学的根拠を踏まえてわかりやすく情報を発信しています。

参考文献

  1. Ding D, Nguyen B, Nau T, et al. Daily steps and health outcomes in adults: a systematic review and dose-response meta-analysis. Lancet Public Health. 2025;10(8):e668-e681.
    PubMed
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  3. Stens NA, et al. Relationship of Daily Step Counts to All-Cause Mortality and Cardiovascular Events. J Am Coll Cardiol. 2023;82(15):1483-1494.
    PubMed
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  6. Engeroff T, Groneberg DA, Wilke J. After Dinner Rest a While, After Supper Walk a Mile? A Systematic Review with Meta-analysis on the Acute Postprandial Glycemic Response to Exercise Before and After Meal Ingestion. Sports Med. 2023;53(4):849-869.
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    PubMed

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