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第2回 なぜ年齢とともに歩幅が狭くなる?「前に足を出す」だけでは歩幅は広がらない【札幌・琴似】

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第2回 なぜ年齢とともに歩幅が狭くなる?「前に足を出す」だけでは歩幅は広がらない【札幌・琴似】

第2回 なぜ年齢とともに歩幅が狭くなる?「前に足を出す」だけでは歩幅は広がらない【札幌・琴似】

2026/08/13

「正しく歩く」シリーズ 第2回
第1回では、正しく歩くとは何か、そしてなぜ 「背筋を伸ばす・踵付近から入る・いつもより少し大股」 というシンプルなポイントをお伝えするのかを解説しました。
▶ 第1回「歩き方は健康の通信簿? 正しく歩くとは」

「最近、歩幅が小さくなった気がする」
「以前より、ちょこちょこ歩くようになった」

年齢を重ねると、このような歩き方の変化がみられることがあります。

では、なぜ歩幅は狭くなるのでしょうか?

多くの方は、

「脚が前に出なくなったから」

と考えるかもしれません。

もちろん、それも一つの要素です。

しかし歩行を詳しくみると、 歩幅をつくっているのは「前に出す脚」だけではありません。

歩幅を考えるうえで大切なのは、
「前の足をどこまで出すか」より、
「後ろの脚から身体をどこまで前へ運べるか」です。

2026年の日本の研究でも、年齢とともに歩幅は小さくなる

2026年6月、Gait & Postureに、 日本の地域在住高齢者を対象とした新しい研究が報告されました。

対象となったのは、 69~89歳の地域在住者691人です。

マーカーレス動作解析を使って歩行を調べたところ、 年齢が高いことは、

  • 歩行速度の低下
  • ストライド長(2歩分の距離)の短縮
  • 足のクリアランスの低下
  • 股関節・膝関節の動く範囲の減少

と関連していました。

具体的には、年齢が1歳高いことに対して、 ストライド長は約1.2cm短い関連が示されています。

ここは少し注意が必要です。
これは69~89歳の人たちを一時点で比較した「横断研究」です。 「同じ人の歩幅が毎年必ず1.2cmずつ短くなる」という意味ではありません。
それでも、大規模な日本人高齢者のデータで、 年齢と歩行速度・歩幅・関節運動の変化が同時に確認された点は重要です。

なぜ年齢とともに歩幅が狭くなるのでしょうか?

歩幅が狭くなる主な理由は?

加齢に伴って、股関節や膝の動き、片脚で身体を支える能力、 足首で身体を前へ送り出す力などが低下し、 身体を一歩ごとに前へ運べる距離が小さくなることが関係します。

つまり、 「前の脚が上がらなくなった」という一つの原因だけではありません。

歩行全体の機能が少しずつ変化した結果として、 一歩が小さくなっていくと考えた方がよいのです。

歩幅をつくっているのは「前の脚」だけではない

ここが今回、最もお伝えしたいところです。

歩くとき、前の脚を大きく振り出せば歩幅が広がるように見えます。

しかし実際の歩行では、 その前に反対側の脚で身体を支えながら、身体そのものを前へ移動させています。

流れを簡単にすると、

踵付近から接地する

足裏へ体重が移る

身体が支持脚の上を前へ進む

後ろ脚が身体の後方に残る

前足部へ重心が移る

足首・後ろ脚から身体を前へ送り出す

反対側の脚が前へ出る

という連続した運動になります。

つまり歩幅は、

前の脚を無理に遠くへ出してつくるのではなく、
後ろの脚から身体が前へ進んだ結果として生まれる。

という考え方が大切です。

最新研究が示す「足首」の重要性

この後ろ脚から身体を前へ運ぶ働きで、 非常に重要になるのが足関節底屈筋群です。

主には、ふくらはぎにある下腿三頭筋などが関係します。

2025年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、 60歳以上を含む11研究をまとめて、 加齢による足関節底屈筋群の変化と歩行との関係が検討されました。

その結果、高齢者では、

  • 足関節底屈筋力の低下
  • 筋肉量・筋厚の低下
  • 筋やアキレス腱の機械的特性の変化

がみられ、こうした変化は 歩行速度の低下、足関節パワーの低下、歩幅の短縮、歩行効率の低下 などと関連していました。

つまり、

「歩幅が狭くなった」

「前の脚だけの問題」とは限らない

ということです。

むしろ、 後ろ側の足首で身体を前へ送る能力が低下している可能性 にも目を向ける必要があります。

高齢者では「足首の仕事」を股関節で補っていることも

この考え方は、最近になって突然分かったものではありません。

歩行研究としてよく知られているJudgeらの研究では、 平均79歳の高齢者と若年者を比較しています。

高齢者では、脚の長さを補正した通常歩行の歩幅が 若年者より約10%短く、 歩行後半の足関節底屈と足関節底屈パワーも低下していました。

一方、高齢者では足首から生み出す力の低下を補うように、 股関節屈筋のパワーを大きく使っていました。

これは、 足首で身体を前へ送り出す働きが低下すると、身体は別の関節を使って歩行を成立させようとする ことを示す一例です。

2021年のシステマティックレビュー・メタ解析でも、 若年者に比べて高齢者では歩行中の 足関節底屈角度と推進期の足関節パワーが小さい ことが確認されています。

だから「前足部まで体重を移す」ことが大切

第1回では、 「踵付近から入る」ことを歩行のスタートとして説明しました。

しかし、踵から入って終わりではありません。

接地したあと、 身体は支持している脚の上を前方へ移動していきます。

そして歩行後半では、 荷重が前足部・つま先側へ移り、そこから次の一歩へ身体を送り出します。

踵付近から接地する

身体を足の上に乗せる

前足部まで重心を移す

後ろ脚から身体を送る

この流れが小さくなると、 身体を前へ運べる距離も小さくなり、 結果として反対側の一歩も小さくなりやすくなります。

そのため私たちは、 単に「足を前へ出せていますか?」だけではなく、 足圧が踵から前足部までどのように移動しているか も歩行を考える材料の一つとして確認します。

では、なぜ「少し大股で」と伝えるのか?

第1回で、 私が歩き方をお伝えするときには、

「背筋を伸ばす」
「踵付近から入る」
「いつもより少し大股で歩く」

という程度にポイントを絞ることがある、とお話ししました。

「少し大股」という言葉も、 前の足を思い切り遠くへ出してください という意味ではありません。

歩幅を少し意識することで、

  • 身体を支持脚の上へ乗せる
  • 後ろ脚を使う
  • 前足部まで重心を移す
  • 身体を一歩ごとに前へ運ぶ

という本来の歩行の流れを引き出したいからです。

ただし、大きければ大きいほどよいわけではありません。
無理に歩幅を広げると、踵が身体より大きく前へ出て、 ブレーキのような力が増えたり、バランスを崩したりすることがあります。
そのため、「無理な大股」ではなく “いつもより少し大きく”という程度がポイントです。

歩幅が狭いこと自体が、すべて悪いわけではありません

ここも大切です。

歩幅が小さいからといって、 必ず病気や身体機能低下があるとは限りません。

滑りやすい路面、混雑した場所、痛みがあるとき、 バランスが不安なときなど、 私たちは状況に応じて自然に歩幅を小さくします。

札幌では、冬の雪道で歩幅を小さくすることは 転倒を避けるための合理的な歩き方でもあります。

問題になるのは、 安全な平地でも以前より歩幅を出せなくなってきた という変化です。

重要なのは「歩幅が何cmか」だけではなく、
必要なときに歩幅を広げられる能力が残っているかどうかです。

こんな変化があれば、歩幅を一度確認してみましょう

  • 以前より歩くスピードが遅くなった
  • 歩幅が小さくなったと言われる
  • 靴のつま先を擦ることが増えた
  • 横断歩道を渡るのが以前より大変になった
  • 踵が上がらず、後ろ脚を使っている感じがしない
  • 少し速く歩こうとしても速度を上げられない

こうした変化は、 単に「年齢だから」と片付けるのではなく、 筋力、関節可動域、バランス、歩行速度などを確認するきっかけになります。

歩幅は「前」ではなく「後ろ」を見る

今回、一番覚えておいていただきたいのはここです。

歩幅を広げたいとき、 前の足だけを遠くへ出そうとしない。

踵付近から接地し、
身体を支持脚の上へ乗せ、
前足部まで重心を移し、
後ろ脚から身体を前へ運ぶ。

その結果として、反対側の脚が前へ出て歩幅が生まれます。

年齢とともに歩幅が小さくなる背景には、 足首の筋力やパワー、股関節・膝の動き、 バランス、歩行全体の協調性など、 さまざまな要素が関係しています。

だからこそ、 「大股で歩けばいい」と単純に考えるのではなく、 なぜ歩幅が小さくなっているのかを見ること が大切です。

では、歩幅と同じくらい重要な 「歩く速さ」はどうでしょうか?

実は歩行速度は、 筋力やバランス、心肺機能など、 身体全体の状態を反映する非常に重要な指標として研究されています。

次回 第3回

歩く速さは「体力の通信簿」? 歩行速度と健康寿命の関係

なぜ医療・介護の現場で歩行速度が重視されるのでしょうか?
「遅くなった」という変化が何を意味するのかを、 生命予後やフレイルとの研究をもとに解説します。

歩幅についてよくある質問

Q. 年齢とともに歩幅が狭くなるのはなぜですか?

加齢に伴い、足首の筋力・パワー、股関節や膝関節の動き、 バランス能力などが変化し、 一歩ごとに身体を前へ運べる距離が小さくなることが関係します。 前の脚だけの問題ではありません。

Q. 歩幅を広げるには、前の足を遠くへ出せばよいですか?

前の足だけを無理に遠くへ出す必要はありません。 支持している脚の上へ身体を乗せ、 後ろ脚から身体を前へ送った結果として、 反対側の脚が自然に前へ出ることが理想です。

Q. 大股で歩くほど健康によいですか?

大きければ大きいほどよいわけではありません。 体格や筋力、バランス能力に応じた歩幅が必要です。 無理に大股にするのではなく、 安全な方では「いつもより少し大きく」を目安にします。

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この記事を書いた人

成田 悟志(理学療法士)

株式会社プライズライフ 代表取締役/リハビリジム プライズネス代表。
医療・リハビリの臨床経験をもとに、 歩行、筋力、介護予防、健康寿命について、 医学的根拠を踏まえてわかりやすく情報を発信しています。

参考文献

  1. Larsen ST, Madeleine P, Matsuda T, et al. Age-related differences in gait among community-dwelling senior adults in Japan: A cross-sectional study using a markerless motion analysis system. Gait Posture. 2026;130:110261.
    PubMed
  2. Etheve F, Caderby T, Begue J. Impact of age-related changes in the mechanical properties of ankle plantarflexor muscles on gait biomechanics and energetics: A systematic review and meta-analysis. J Biomech. 2025;192:112973.
    PubMed
  3. Aboutorabi A, et al. Foot and ankle biomechanics during walking in older adults: A systematic review and meta-analysis of observational studies. Gait Posture. 2021;89:14-24.
    PubMed
  4. Judge JO, Davis RB 3rd, Ounpuu S. Step length reductions in advanced age: the role of ankle and hip kinetics. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 1996;51(6):M303-M312.
    PubMed
  5. Alijanpour E, Russell DM. Age-related changes in gait coordination are focused on the step-to-step transition. J Biomech. 2025;189:112830.
    PubMed

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