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健康寿命を延ばす5つの習慣|歩く・立つ・食べる・筋力・バランスで「長く動ける身体」へ【札幌・琴似】

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健康寿命を延ばす5つの習慣|歩く・立つ・食べる・筋力・バランスで「長く動ける身体」へ【札幌・琴似】

健康寿命を延ばす5つの習慣|歩く・立つ・食べる・筋力・バランスで「長く動ける身体」へ【札幌・琴似】

2026/08/08

長生きできる時代だからこそ、「元気に動ける時間」を延ばしたい

このシリーズでは、最新の統計や研究をもとに、 「長生きできるようになった日本で、私たちは何を考えるべきなのか」 をお伝えしてきました。

第1回では、2025年の簡易生命表から、 女性では約2人に1人が90歳まで生きる時代になったことをご紹介しました。

第2回では、平均寿命と健康寿命は同じではなく、 長く生きるだけではなく、 「健康上の問題で日常生活を制限されずに生活できる期間」 を延ばすことが重要であることをお伝えしました。

そして第3回、第4回では、 要支援・要介護になる主な原因を見てきました。

ここまでのシリーズで分かったこと

要支援では、 「高齢による衰弱」「関節疾患」「骨折・転倒」などが上位にあります。

要介護では、 「認知症」「骨折・転倒」「高齢による衰弱」などが大きな原因となっています。

一見すると異なる問題に見えますが、 その背景を考えていくと、 身体機能・身体活動・生活機能を長く維持することの重要性 が見えてきます。

医学は進歩しました。しかし「毎日の生活」は薬では代えられません

現在の医療では、 以前であれば助からなかった病気でも、 治療によって命を救えるケースが増えています。

人工関節によって再び歩けるようになる方もいます。 脳卒中や心臓病の治療も大きく進歩しました。 がんも、治療しながら長く生活する時代になっています。

医学の進歩は、 私たちの人生を確実に長くしてきました。

しかし、 医学がどれだけ進歩しても、 日々の生活を誰かに代わってもらうことはできません。

今日、歩くか。

立って身体を動かすか。

必要な栄養をとるか。

筋肉を使うか。

転ばないための身体機能を維持するか。

こうした小さな積み重ねが、 10年後、20年後の身体につながっていきます。

健康寿命を守る5つの習慣

  1. 歩く機会を減らさない
  2. 立つ機会を増やす
  3. しっかり食べ、必要な栄養と水分をとる
  4. 筋力トレーニングを続ける
  5. バランス能力を維持する

特別なことではありません。 しかし、この「当たり前」を長く続けることが大切です。


① 歩く機会を減らさない

健康づくりというと、 まず「ウォーキング」を思い浮かべる方も多いと思います。

もちろん歩くことは大切です。

しかし、ここで伝えたいのは、 「毎日○○歩を達成しなければならない」という話ではありません。

もっと大切なのは、 生活の中から歩く機会そのものをなくさないこと です。

例えば、

  • 近所へ買い物に行く
  • 散歩をする
  • 家の中を移動する
  • 趣味のために外出する
  • 友人に会いに行く
  • 公共交通機関を利用して出かける

こうした一つひとつが身体活動です。

歩くことは「脚の運動」だけではありません

私は、歩くことの価値は、 単に脚の筋肉を使うことだけではないと考えています。

歩けるから、買い物へ行けます。

歩けるから、友人に会えます。

歩けるから、旅行へ行けます。

歩けるから、趣味や地域活動にも参加できます。

つまり、 歩行能力は社会とのつながりや、その人らしい生活を続けるための土台 でもあります。

こんな変化はありませんか?

  • 以前より歩く速度が遅くなった
  • 長い距離を歩かなくなった
  • 近い場所でも車を使うようになった
  • 買い物へ行く回数が減った
  • 疲れるので外出を断ることが増えた
  • 転ぶのが怖くて出かけなくなった

「まだ歩けるから大丈夫」ではなく、 以前と比べて何が変わったのかを見ることが重要です。

「歩けなくなってから」ではなく、「歩けるうち」から

介護予防で重要なのは、 歩けなくなってから運動を始めることだけではありません。

まだ普通に歩けている時期から、 その能力を維持することです。

歩く量が減ると、 身体活動量が減ります。

活動量が減ると、 筋力や持久力も低下しやすくなります。

そして身体機能が低下すると、 さらに歩かなくなる。

この悪循環をできるだけ早い段階で断ち切ることが重要です。

歩ける
↓ 外出できる
↓ 人と会える・好きなことができる
↓ さらに身体を使う
↓ 身体機能と生活を維持しやすくなる

健康寿命を考えるとき、 「何歩歩いたか」だけを見るのではなく、 歩くことでどのような生活を続けられているか まで考えることが大切だと思います。


②「運動する」だけでなく、立つ機会を増やす

「毎日30分、散歩をしています。」

これは、とても良い習慣です。

しかし、健康寿命を考えるときには、 運動をした時間だけではなく、 それ以外の時間をどのように過ごしているか にも目を向ける必要があります。

例えば、 30分散歩をしていても、 それ以外の時間のほとんどを椅子やソファに座って過ごしていたらどうでしょうか。

近年では、 運動不足だけではなく、 長時間の座位行動(座りっぱなし) そのものが健康上の課題として注目されています。

「運動している」=「一日中よく動いている」ではありません

大切なのは、 運動の時間をつくることに加えて、 日常生活の中で身体を使う機会を減らさないことです。

なぜ「立つ」ことが大切なのでしょうか?

座っている状態から立ち上がるだけでも、 身体では多くの筋肉が働きます。

特に、

  • 太ももの筋肉
  • お尻の筋肉
  • ふくらはぎ
  • 姿勢を支える体幹の筋肉

など、歩行や階段、立ち上がりに必要な筋肉を使います。

さらに立位では、 重心を保つために姿勢を調整する必要があります。

つまり「立つ」という日常的な動作にも、 筋力とバランス能力を使う機会が含まれているのです。


便利な生活ほど、立たなくても暮らせるようになりました

現代の生活は非常に便利になりました。

テレビのリモコン、 インターネットショッピング、 宅配サービス、 自動車、 エレベーター、 エスカレーター。

どれも生活を豊かにしてくれる大切なものです。

一方で、 「身体を使わなくても生活できる環境」 にもなっています。

以前なら立って行っていたことを座ったままで済ませ、 以前なら歩いていた距離を車で移動する。

こうした小さな変化が積み重なると、 1日の身体活動量は知らないうちに減っていきます。

まずは生活の中で「立つ理由」をつくる

  • テレビのCMや番組の区切りで一度立つ
  • 電話中に安全な範囲で立って話す
  • 飲み物を自分で取りに行く
  • 家事を一つ増やしてみる
  • 座り続けたら、一度立って少し歩く

大切なのは、 「何分ごとに必ず立たなければならない」と数字だけに縛られることではありません。

長時間座り続ける時間を減らし、生活の中にこまめな身体活動を取り戻すこと から始めてみましょう。


③ 運動するなら「食べること」も忘れない

健康寿命を延ばすためには、 運動だけを考えていても十分ではありません。

特に高齢になると注意したいのが、 低栄養と筋肉量の低下です。

「太りたくないから食事を減らそう。」

「年を取ったから、そんなに食べなくてもいい。」

このように考えて、 食事量そのものが少なくなっている方もいます。

しかし、 身体を動かすためにはエネルギーが必要です。

そして、 筋肉を維持するためには、 その材料となる栄養が必要です。

「運動」と「栄養」はセットで考える

運動する
↓ 筋肉へ刺激が入る
↓ 十分なエネルギー・たんぱく質などを摂る
↓ 筋肉を維持・改善するための土台になる

運動だけ頑張っても、 身体をつくる材料が不足していれば、 十分な効果を得にくくなります。

特に意識したいのが「たんぱく質」です

筋肉を維持するうえで重要な栄養素の一つが、 たんぱく質です。

例えば、

  • 牛乳・乳製品
  • 大豆・豆腐・納豆などの大豆製品

などが代表的なたんぱく質源です。

ただし、 「たんぱく質だけをたくさん食べればよい」 という意味ではありません。

主食、主菜、副菜を基本として、 身体活動量や体格、持病などに合わせて、 必要なエネルギーと栄養を確保することが重要です。

腎臓病などで食事制限を受けている方は、 自己判断でたんぱく質を増やさず、 医師や管理栄養士の指示に従ってください。


「体重が減った」は、喜んでよいとは限りません

若い頃は、 体重が減ると「痩せて良かった」と考えることもあります。

しかし高齢者の場合、 意図していない体重減少には注意が必要です。

食事量が減って体重が落ちている場合、 脂肪だけではなく筋肉も失われている可能性があります。

筋肉が減ると、

  • 立ち上がりにくくなる
  • 歩行速度が遅くなる
  • 疲れやすくなる
  • 転倒しやすくなる
  • 外出する機会が減る

といった身体機能の低下につながることがあります。

「食べる力」も健康寿命を支える力です

運動して、 しっかり食べて、 また身体を動かす。

「動くこと」と「食べること」を別々に考えないこと が大切です。


水分も忘れてはいけません

特に夏場に注意したいのが水分不足です。

高齢になると、 のどの渇きを感じにくくなることがあります。

さらに、 「トイレへ行くのが大変だから」 と水分を控えてしまう方もいます。

脱水は体調不良だけではなく、 ふらつきや活動量低下につながることもあります。

持病などによる水分制限がなければ、 食事だけに頼らず、 日中もこまめに水分を摂る習慣をつくることが大切です。

心臓病や腎臓病などで水分量について指示を受けている方は、 必ず主治医の指示を優先してください。

ここまでの3つ

① 歩く
歩行能力を維持し、外出や社会参加を続ける。

② 立つ
座りっぱなしを減らし、生活の中で身体を使う。

③ 食べる
運動する身体を支えるエネルギーと栄養、水分を確保する。

この3つだけでも、 すべてがつながっていることが分かります。


④ 健康寿命を守るために「筋力」を維持する

歩くことは、健康づくりの基本です。

しかし、 ここで一つ知っておいていただきたいことがあります。

それは、 「歩いていること」と「十分な筋力があること」は、必ずしも同じではない ということです。

毎日散歩をしていても、

  • 椅子から立つときに手を使う
  • 階段では手すりが必要になった
  • 床から立ち上がるのが大変になった
  • 以前より歩く速度が遅くなった
  • 少しの段差でも不安を感じる

といった変化がみられることがあります。

これは、 日常的に歩くことだけでは、 筋力を維持するために必要な刺激が十分ではない場合がある からです。


なぜ年齢とともに筋力が低下するのでしょうか?

年齢を重ねると、 筋肉量や筋力は徐々に低下していきます。

この加齢に伴う筋肉量や筋力、身体機能の低下には、 サルコペニアという考え方があります。

ただし、 筋力低下は「年齢」だけで決まるものではありません。

身体活動量の低下、 病気、 低栄養、 長期間の安静など、 さまざまな要因が影響します。

特に注意したいのは「使わなくなること」

足腰が弱くなる

歩くことや階段が大変になる

身体を使う機会が減る

さらに筋力が低下する

もっと動かなくなる

という悪循環に入ることがあります。

「歩くための筋力」が低下すると、生活が変わります

筋力は、 単に重い物を持ち上げるために必要なものではありません。

私たちの日常生活のほとんどに、 筋力が使われています。

例えば、

  • 椅子から立ち上がる
  • トイレから立つ
  • 階段を上る
  • 坂道を歩く
  • 段差を越える
  • 転びそうになったときに踏ん張る
  • 買い物袋を持って歩く

こうした動作を続けるためには、 一定以上の筋力が必要です。

つまり筋力は、 「自分の身体を自分で動かすための基礎体力」 とも言えます。


特に維持したい「足腰の筋肉」

健康寿命を考えるうえで、 特に重要なのが下半身の筋力です。

日常生活を支える代表的な筋肉

① 太ももの前側(大腿四頭筋)
立ち上がり、階段、歩行などで膝を支える重要な筋肉です。

② お尻(殿筋群)
立ち上がる、歩く、階段を上るといった動作で身体を支えます。

③ ふくらはぎ(下腿三頭筋など)
歩行時に身体を前へ進めたり、立位を支えたりする働きがあります。

④ 体幹の筋肉
身体を安定させ、手足を動かすための土台になります。

ただし、 「この4つだけ鍛えればよい」という意味ではありません。

人によって、 弱くなっている筋肉も、 苦手になっている動作も違います。

だからこそ、 筋肉だけを見るのではなく、実際の動作を見ること が大切です。


「何kg持ち上げられるか」だけが筋力ではありません

私たち理学療法士が身体機能を見るときには、 筋力だけを単独で見るわけではありません。

例えば、

  • 椅子から立ち上がれるか
  • 何回続けて立ち上がれるか
  • 歩く速度はどうか
  • 階段を安全に上れるか
  • 片脚に体重をかけられるか
  • ふらついたときに姿勢を立て直せるか

など、 筋力が実際の生活動作にどのようにつながっているか を確認します。

筋力トレーニングの目的は「筋肉をつけること」だけではありません

立てる。

歩ける。

階段を上れる。

転びそうになったときに踏ん張れる。

そして、 行きたい場所へ自分の足で行ける。

その能力をできるだけ長く維持するために、 筋力トレーニングがあります。

高齢者でも筋力トレーニングはできます

「もう80歳だから筋トレなんて無理。」

「高齢者は軽い体操くらいでいい。」

そう考えている方もいるかもしれません。

しかし、 高齢者であっても、 身体の状態に合わせた適切な筋力トレーニングによって、 筋力や身体機能の改善が期待できます。

大切なのは、 年齢だけで運動内容を決めないことです。

同じ80歳でも、 身体機能は一人ひとり大きく異なります。

10回の立ち上がりで十分な方もいれば、 それでは負荷が軽すぎる方もいます。

逆に、 立ち上がり運動そのものが難しい方もいます。

そのため、 体力や病気、痛み、転倒リスクなどを確認しながら、 その人にとって適切な負荷を設定すること が重要です。


自宅で始めるなら「立ち上がり」も一つの方法です

特別な器具がなくても、 日常生活の動作を利用して筋力を使うことはできます。

代表的なのが、 椅子からの立ち上がりです。

安定した椅子に座り、 安全を確保したうえで、 ゆっくり立ち上がり、 ゆっくり座ります。

太ももやお尻など、 日常生活に必要な筋肉を使う運動になります。

ただし「回数」より大切なのは、その人に合っているか

「高齢者なら10回」

「毎日30回」

というように、 全員に同じ回数が適しているわけではありません。

楽に何十回もできる運動では、 筋力を高める刺激として十分ではない場合があります。

反対に、 無理な負荷では痛みや転倒につながる可能性があります。

安全性を確保しながら、 現在の身体能力に合った負荷で行うことが重要です。

「歩く」+「筋力トレーニング」で考える

歩くことと筋力トレーニングは、 どちらか一つを選ぶものではありません。

歩くことで、 身体活動量や持久力を維持する。

筋力トレーニングによって、 立つ、歩く、階段を上るための力を維持する。

それぞれ役割が違います。

「歩くから筋トレはいらない」 でも、 「筋トレしているから歩かなくてよい」 でもありません。

両方を生活の中に取り入れることが、 長く動ける身体づくりにつながります。


⑤ 「筋力」だけではなく、バランス能力も維持する

健康寿命を守る5つ目の習慣は、 バランス能力を維持することです。

これまで、 歩くこと、 立つこと、 栄養、 筋力トレーニングの重要性についてお話ししてきました。

しかし、 足の筋力が強ければ、 絶対に転ばないのでしょうか。

答えは、 「筋力だけでは十分ではありません」 です。

私たちが立ったり歩いたりするときには、 筋力だけではなく、 身体の位置を感じ取り、 重心をコントロールし、 状況に合わせて姿勢を修正する能力が必要です。

これが、 日常生活で必要となる バランス能力です。


そもそも「バランスが良い」とは、どういうことでしょうか?

一般的には、 「ふらつかない人」を 「バランスが良い」と表現することがあります。

しかし、 バランス能力は、 単に身体が揺れないことではありません。

私たちは立っているだけでも、 身体の重心を支持基底面の中に保つために、 常に小さな姿勢調整を行っています。

支持基底面とは?

簡単に言えば、 身体を支えている範囲です。

両脚で立っているときは、 両足とその間の範囲が身体を支えています。

足を閉じたり、 片脚立ちになったりすると、 身体を支えられる範囲は狭くなります。

その狭い範囲の中で重心をコントロールするため、 より高いバランス能力が必要になります。

歩くこと自体が「バランス運動」です

実は、 歩行もバランス能力を必要とする動作です。

歩いているときには、 両脚がずっと地面についているわけではありません。

右脚で身体を支えながら左脚を前へ運び、 次は左脚で身体を支えながら右脚を前へ運びます。

つまり歩行には、 片脚で身体を支える瞬間が繰り返し存在します。

さらに、 身体の重心は前後・左右へ移動します。

その重心をコントロールしながら、 私たちは前へ進んでいるのです。

歩くために必要なのは「脚力」だけではありません

筋力
+ バランス能力
+ 関節の動き
+ 感覚
+ 姿勢を修正する能力

こうした複数の機能が組み合わさって、 私たちは安全に歩いています。


転びそうになったときに必要なのは「立ち直る能力」

日常生活では、 常に安定した場所だけを歩くわけではありません。

段差があります。

道路には凹凸があります。

冬の北海道では、 雪や凍結した路面を歩かなければならないこともあります。

人とぶつかりそうになったり、 急に方向を変えたりすることもあります。

そのとき重要なのは、 一度もふらつかないことではありません。

ふらついたときに、 身体を立て直せることです。

例えば、 身体の重心が大きく移動したときには、 足を一歩出して支持基底面をつくり直し、 転倒を防ぐ必要があります。

このように、 実際の転倒予防では、 姿勢が崩れたときに反応できる能力 も重要になります。


「片脚立ちができるか」だけで判断しない

バランス能力を見る方法として、 片脚立ちはよく知られています。

もちろん、 片脚で身体を支える能力を見るうえで有用な方法の一つです。

しかし、 日常生活のバランス能力は、 片脚立ちの秒数だけでは判断できません。

実際の生活では、

  • 身体を前へ動かす
  • 左右へ体重を移す
  • 方向を変える
  • 段差を越える
  • 物を持ちながら歩く
  • ふらついたときに一歩踏み出す

など、 動きながら身体をコントロールする能力 が求められます。

そのため、 バランス練習も、 その人の身体能力に応じて段階的に行うことが大切です。


バランス練習も「少し難しい」が大切です

筋力トレーニングと同じように、 バランス練習も、 簡単すぎる課題では十分な刺激にならないことがあります。

一方で、 難しすぎれば転倒につながります。

そこで重要になるのが、 安全を確保しながら、少しだけ難しい課題に挑戦すること です。

バランス練習の考え方

LEVEL 1 支持基底面を少し狭くする
両脚をそろえて立つ、足を前後にして立つなど、 安定した場所で姿勢を保ちます。

LEVEL 2 左右へ体重を移す
安全な場所で、 片側の脚へゆっくり体重を移します。

LEVEL 3 片脚支持を使う
手すりなど安全を確保した状態で、 片側の脚で身体を支える練習を行います。

LEVEL 4 身体を動かしながら支える
片側の脚で身体を支えながら、 反対側の脚を前後・左右へ動かすなど、 動的な課題へ進みます。

ただし、 転倒歴がある方や、 ふらつきが強い方が、 一人で難しいバランス練習を行うことは危険です。

椅子や手すりなど、 すぐにつかまれる環境を用意し、 必要に応じて専門家に身体機能を評価してもらいましょう。


筋力とバランスは「別々」ではありません

ここまで筋力とバランスを分けて説明しましたが、 実際の動作では両方を同時に使っています。

例えば、 階段を上るときには、 身体を持ち上げるための筋力が必要です。

同時に、 片脚で身体を支えながら、 反対側の脚を次の段へ運ぶバランス能力も必要です。

歩行も同じです。

筋力が低下すれば、 身体を十分に支えられなくなります。

バランス能力が低下すれば、 筋力があっても、 動きの中で身体を安定させることが難しくなります。

だから「歩くだけ」でも「筋トレだけ」でもありません

歩く。

立つ。

筋力を保つ。

バランス能力を保つ。

そして、 それらの能力を実際の生活の中で使い続ける。

身体機能を総合的に維持することが、 長く自分の足で生活するために重要です。


転倒を防ぐことは、その先の生活を守ること

このシリーズの第3回、第4回でもご紹介したように、 「骨折・転倒」は要支援・要介護になる主な原因の一つです。

特に高齢者では、 転倒による骨折をきっかけに、 入院や安静によって身体活動量が大きく低下することがあります。

そして、

転倒
↓ 骨折・痛み
↓ 動けない期間が増える
↓ 筋力・体力が低下する
↓ 歩くことへの不安が強くなる
↓ 外出が減る

という悪循環につながることがあります。

だからこそ、 「転んでからリハビリをする」だけではなく、 転ぶ前から身体機能を維持する という考え方が重要なのです。

健康寿命を守る5つの習慣

ここまでご紹介してきたのは、 特別なことではありません。

  1. 歩く機会を減らさない
  2. 立つ機会を増やす
  3. しっかり食べ、必要な栄養と水分をとる
  4. 筋力トレーニングを続ける
  5. バランス能力を維持する

大切なのは、 どれか一つだけを頑張ることではありません。

「動く・食べる・鍛える・支える」を、 毎日の生活の中で続けていくこと。

それが、 健康寿命を支える身体づくりの基本です。


医学の進歩で「長く生きる」ことができる時代になりました

この5回のシリーズを通して、 私が最もお伝えしたかったことがあります。

それは、 「長生きできるようになったからこそ、 これからは長い人生をどのような身体で過ごすのかを考える必要がある」 ということです。

医学は大きく進歩しました。

以前であれば命に関わった病気でも、 早期発見や治療によって助かるケースが増えました。

がん治療、 心臓病や脳卒中の治療、 人工関節などの整形外科手術、 薬物療法など、 さまざまな医療技術が進歩しています。

その結果、 日本では長く生きることが当たり前の時代になってきました。

このシリーズ第1回でご紹介したように、 2025年(令和7年)簡易生命表では、 平均寿命は 男性81.35歳、女性87.33歳

さらに、 90歳まで生存する割合は、 男性26.7%、女性50.8%です。

女性では約2人に1人が90歳まで生きる時代

「90歳まで生きる」ということは、 一部の特別な人だけの話ではなくなってきました。

だからこそ、 これから考えなければならないのは、 「何歳まで生きるのか」だけではありません。

「その年齢まで、どのような身体で生きるのか」

という視点が、 これまで以上に重要になっているのではないでしょうか。


65歳になったら、人生はあと何年あるのでしょうか?

「高齢者」という言葉から、 65歳を一つの区切りとして考える方もいるかもしれません。

しかし現在は、 65歳になってからも長い人生が続きます。

2025年の簡易生命表では、 65歳時点の平均余命は、

  • 男性 19.68年
  • 女性 24.52年

です。

平均すると、 男性でも65歳から約20年、 女性では約25年あります。

この20年、25年を、 どのように過ごしたいでしょうか。

旅行へ行きたい。

趣味を続けたい。

友人と会いたい。

買い物へ自分で行きたい。

家族と出かけたい。

できるだけ自分のことは自分でしたい。

そのために必要なのは、 寿命だけではありません。

自分の身体を自分で動かせる能力を、 できるだけ長く維持すること が重要になります。


病気がないことだけが「健康」ではありません

年齢を重ねれば、 高血圧や糖尿病、 膝や腰の痛み、 心臓病など、 何らかの病気や身体の問題を抱える方も増えてきます。

しかし、 病気があるからといって、 必ずしも自分らしい生活ができなくなるわけではありません。

薬を飲みながら旅行をしている方もいます。

人工関節が入っていても、 趣味を楽しんでいる方もいます。

慢性的な病気を管理しながら、 仕事や地域活動を続けている方もいます。

だからこそ、 健康寿命を考えるときには、 「病気があるか、ないか」だけで身体を考えないこと も大切です。

大切なのは「何ができるか」

自分で立てる。

自分で歩ける。

外出できる。

人と会える。

好きなことを続けられる。

身体機能を維持することは、 その人らしい生活を維持することにつながります。


介護予防は、介護が必要になってから始めるものではありません

第3回では、 要支援になる主な原因として、 「高齢による衰弱」「関節疾患」「骨折・転倒」についてご紹介しました。

第4回では、 要介護になる主な原因として、 「認知症」「骨折・転倒」「高齢による衰弱」について考えてきました。

これらの中には、 突然起こるものもあります。

しかしその一方で、 何年も前から少しずつ身体や生活が変化しているケースもあります。

  • 歩く速度が遅くなった
  • 階段を避けるようになった
  • 立ち上がるときに手を使うようになった
  • つまずくことが増えた
  • 外出する回数が減った
  • 家で座っている時間が長くなった

こうした変化があっても、 「まだ生活できているから大丈夫」 と考えてしまいがちです。

しかし、 介護予防を始めるタイミングは、 介護が必要になってからではありません。

まだ歩ける。

まだ外出できる。

まだ自分のことを自分でできる。

その段階から身体機能を維持することが、 本当の意味での介護予防ではないでしょうか。


40代・50代・60代から考えてほしいこと

「介護予防」という言葉を聞くと、 70代、80代になってから考えることだと思うかもしれません。

しかし、 身体づくりはもっと早い段階から考えてよいと思います。

40代、50代になると、 仕事や家庭が忙しくなり、 運動する時間が減る方も少なくありません。

車で移動し、 仕事では長時間座り、 階段ではなくエレベーターを使う。

気が付けば、 「身体を動かす」という機会そのものが、 若い頃より大きく減っていることがあります。

その状態が、 10年、20年と続いたらどうなるでしょうか。

将来の身体は、 突然70歳になった日に決まるわけではありません。

今日の身体は、これまでの生活の積み重ね。
未来の身体は、今日からの生活の積み重ね。

年齢を止めることはできません。

しかし、 身体を動かすこと、 食べること、 筋力を維持すること、 バランス能力を維持することは、 今日から始めることができます。


健康寿命を守るために、今日からできる5つのこと

① 歩く

歩く機会を減らさず、 外出や社会参加につながる身体を維持する。

② 立つ

座りっぱなしを減らし、 生活の中でこまめに身体を使う。

③ 食べる

身体を動かすためのエネルギーと、 筋肉を維持するための栄養を確保する。

④ 筋力を維持する

立つ、歩く、階段を上るために必要な力を、 筋力トレーニングによって維持する。

⑤ バランス能力を維持する

身体の重心をコントロールし、 動きの中で姿勢を保つ能力を維持する。

この5つは、 それぞれ独立しているわけではありません。

歩くためには筋力が必要です。

筋肉を維持するためには栄養が必要です。

安全に歩くためにはバランス能力が必要です。

そして、 歩けるから外出し、 人と会い、 好きなことを続けることができます。

すべてがつながっています。


理学療法士として22年以上、私が感じていること

私は理学療法士として22年以上、 病院や地域、 そして現在のリハビリジムで、 多くの方の身体と生活に関わってきました。

病気になった方。

手術を受けた方。

転倒して骨折した方。

長期間の入院によって筋力が低下した方。

そして、 もう一度歩くために一生懸命リハビリをしている方。

多くの方を見てきたからこそ、 今強く感じることがあります。

身体を動かすことは、 「運動すること」そのものが目的ではありません。

自分の足で歩くため。
好きな場所へ行くため。
好きなことを続けるため。
大切な人と時間を過ごすため。

そのために、 身体を維持するのだと思います。

医学が延ばしてくれた人生を、どう生きるか

医学の進歩によって、 私たちは長く生きられるようになりました。

これは、 とても素晴らしいことです。

だからこそ、 次に考えたいのは、 「延びた人生を、どのように生きるのか」 ではないでしょうか。

90歳まで生きることが珍しくない時代。

人生の最後まで、 すべてを自分で決めることはできません。

病気になることもあります。

ケガをすることもあります。

どれだけ努力しても、 介護が必要になることもあります。

だから、 「運動すれば絶対に介護にならない」 という話ではありません。

それでも、 今できることを続けることで、 未来の身体をより良い状態に保てる可能性があります。

歩く。

立つ。

食べる。

筋力を保つ。

バランス能力を保つ。

一つひとつは、 決して特別なことではありません。

しかし、 その小さな積み重ねが、 5年後、10年後、20年後の身体につながっていきます。

何歳になっても、 自分の足で好きな場所へ。

長生きできる時代だからこそ、 「長く動ける身体」を 今からつくっていきましょう。


「健康寿命と日々の運動」全5回

第1回|女性の2人に1人が90歳まで生きる時代へ
最新の平均寿命から考える健康づくり
第1回を読む


第2回|平均寿命と健康寿命は同じではない
長生きできても「元気に暮らせる期間」とは
第2回を読む


第3回|要支援になる主な原因は「衰弱・関節疾患・骨折・転倒」
健康寿命を守るために知っておきたい身体のサイン
第3回を読む


第4回|要介護になる主な原因は「認知症・骨折・転倒・衰弱」
身体活動が健康寿命を守る理由を最新研究から解説
第4回を読む


第5回|健康寿命を延ばす5つの習慣
歩く・立つ・食べる・筋力・バランス
(現在の記事)

身体の変化が気になったら

「以前より歩くのが遅くなった」

「階段がつらくなった」

「転びそうになることが増えた」

「運動した方がよいと思うけれど、何をすればよいか分からない」

そのような場合は、 単に運動を始めるだけではなく、 現在の身体機能を確認することも大切です。

リハビリジム プライズネスでは、 理学療法士が身体機能を評価し、 一人ひとりの身体の状態や目標に合わせて、 個別に運動をご提案しています。

何歳になっても、 自分の足で好きなことを続けられる身体を目指して。

身体づくりについて気になることがありましたら、 お気軽にご相談ください。

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