平均寿命と健康寿命は同じではない|長生きできても「元気に暮らせる期間」とは【札幌・琴似】
2026/08/04
長生きできても、ずっと元気とは限りません
前回の記事では、 2025年(令和7年)の簡易生命表から、日本人の平均寿命が 男性81.35歳、女性87.33歳 となり、女性では約2人に1人が90歳まで生きる時代になったことをご紹介しました。
医学の進歩によって、私たちはこれまで以上に長く生きられるようになりました。 これは本当に素晴らしいことです。
しかし、ここで一つ考えなければならないことがあります。
平均寿命が延びることと、 元気に生活できる期間が延びることは同じではありません。
例えば、 90歳まで生きたとしても、 80歳頃から介護が必要になった場合と、 89歳まで自分の足で歩き、旅行や趣味を楽しめた場合では、 人生の過ごし方は大きく異なります。
そこで重要になるのが、 「健康寿命」 という考え方です。
健康寿命とは何でしょうか?
健康寿命とは、 「健康上の問題によって日常生活が制限されることなく生活できる期間」 を表す指標です。
「病気が一つもない期間」 という意味ではありません。
高血圧や糖尿病などの病気があっても、 適切に治療を受けながら、 仕事や趣味、買い物、旅行などを楽しみ、 自立した生活を送っている方はたくさんいます。
つまり健康寿命とは、 「自分らしい生活を送れる期間」 とも言えるでしょう。
健康寿命は「病気がない期間」ではありません
- 自分で歩ける
- 買い物へ行ける
- 趣味を楽しめる
- 外出できる
- 人と交流できる
こうした日常生活を大きな制限なく送れる期間を示しています。
長生きできる時代だからこそ、 平均寿命だけではなく、 「健康寿命をどれだけ延ばせるか」 が重要になっています。
健康寿命は男性72.57歳、女性75.45歳です
健康寿命の最新確定値は、 2024年12月に厚生労働省から公表された 2022年(令和4年)のデータです。
健康寿命は、 国民生活基礎調査で 「健康上の問題によって日常生活に何か影響がありますか」 という質問に対する回答などをもとに算出されています。
2022年 健康寿命
- 男性 72.57歳
- 女性 75.45歳
一方、 2022年の平均寿命は、
- 男性 81.05歳
- 女性 87.09歳
でした。
平均寿命と健康寿命の差
- 男性 約8.5年
- 女性 約11.6年
つまり、 平均すると男性では約8年半、 女性では約11年半、 何らかの健康上の問題によって日常生活に制限を受けながら生活している期間があることになります。
この「約8〜12年」を誤解してはいけません
この数字を見ると、 「人生の最後の約10年間は寝たきりになる」 とイメージしてしまう方がいます。
しかし、 健康寿命は、そのような意味ではありません。
健康寿命は、 「健康上の問題によって日常生活に制限がある」 期間を含んでいます。
そのため、 この期間には、
- 膝が痛く長距離を歩けない
- 腰痛があり外出回数が減った
- 杖を使って歩いている
- 階段が大変になった
- 買い物へ行く回数が減った
- 介護サービスを利用している
など、 さまざまな状態が含まれます。
つまり、 健康寿命と平均寿命の差は、 「寝たきり期間」 ではなく、 生活に何らかの制限が生じている期間 を表しているのです。
重要なのは 「何歳まで生きるか」ではなく、 「何歳まで自分らしく生活できるか」
旅行へ行く。 買い物へ行く。 趣味を楽しむ。 友人と会う。 孫と遊ぶ。
健康寿命とは、 こうした日常生活を続けられる期間を考えるための指標なのです。
だからこそ、 平均寿命だけではなく、 健康寿命にも目を向けることが重要になります。
健康寿命は、なぜ短くなってしまうのでしょうか?
健康寿命が短くなる原因は、一つではありません。
加齢だけではなく、 生活習慣病、 関節の痛み、 筋力低下、 転倒、 認知機能の低下、 社会とのつながりの減少など、 さまざまな要因が重なり合って進行していきます。
つまり、 「これだけ気を付ければ健康寿命が延びる」 という単純なものではありません。
理学療法士として感じる「最初の変化」
私は理学療法士として22年以上、 急性期病院、訪問リハビリ、そして現在のリハビリジムで、多くの高齢者の方と関わってきました。
その中で感じることがあります。
介護が必要になる方の多くは、 ある日突然身体が動かなくなるわけではありません。
最初は、 本当に小さな変化から始まります。
- 歩く速度が少し遅くなった
- 階段が大変になった
- 立ち上がる時に手を使うようになった
- 膝や腰が痛くて外出が減った
- 疲れやすくなった
- 転ぶのが怖くなった
一つ一つは、 年齢のせいと思ってしまう程度の変化かもしれません。
しかし、 こうした変化が積み重なることで、 身体活動量は少しずつ減っていきます。
身体活動が減ると、身体はさらに衰えます
身体は使わなければ衰えます。 これは医学でもよく知られている「廃用(はいよう)」という考え方です。
歩く距離が減れば、 脚の筋力は低下します。
筋力が低下すると、 さらに歩くことが大変になります。
すると、 外出する回数も減ってしまいます。
活動量が減る悪循環
膝や腰が痛い
↓ 歩く量が減る
↓ 筋力が低下する
↓ 歩くのがさらに大変になる
↓ 外出が減る
↓ 身体活動量がさらに減る
この悪循環は、 多くの高齢者でみられる典型的な経過の一つです。
身体機能と認知機能は、お互いに影響し合っています
最近では、 身体機能と認知機能を別々に考えるのではなく、 互いに影響し合うものとして考える研究が増えています。
例えば、 歩く機会が減れば、 外出も減ります。
外出が減れば、 人と会う機会も減ります。
社会とのつながりが減ることで、 生活の刺激も少なくなります。
反対に、 認知機能が低下すると、 外出や運動の機会が減ることもあります。
つまり、 身体機能と認知機能は、 一方向ではなく、 お互いに影響しながら変化していくのです。
だからこそ、 身体を動かすことが大切です
筋力トレーニングだけで認知症を予防できる、 ということではありません。
しかし、 身体活動を維持することは、 歩くこと、 外出すること、 社会参加を続けることにつながり、 結果として健康寿命を支える重要な土台になると考えられています。
健康寿命を延ばすためには、 一つの方法だけではなく、 身体を動かし続けられる生活そのものを維持すること が重要なのです。
健康寿命を延ばすために、今日からできること
ここまで、 平均寿命と健康寿命の違いについてお話ししてきました。 では、 健康寿命を延ばすためには、 何をすればよいのでしょうか。
「特別な運動を始めなければいけない。」 「毎日1万歩歩かなければいけない。」 そう考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、 健康寿命を支えるのは、 特別なことではありません。
毎日の生活の中で身体を使い続けること。 これが何よりも大切です。
身体は、使うことで維持されます
私たちの身体は、 年齢だけで衰えるわけではありません。
もちろん加齢の影響はあります。 しかし、 身体を動かさなくなることで起こる筋力低下や体力低下は、 加齢以上に大きな影響を与えることがあります。
例えば、 歩く。 立ち上がる。 階段を上る。 荷物を持つ。 庭仕事をする。 掃除をする。
こうした何気ない動作も、 身体にとっては大切な運動です。
逆に、 便利な生活になればなるほど、 身体を使う機会は減ってしまいます。
運動は「身体」だけではなく「生活」を守ります
運動というと、 筋肉を鍛えることをイメージする方が多いかもしれません。
もちろん、 筋力を維持することは非常に重要です。
しかし、 運動によって得られるものは、 筋力だけではありません。
- 歩ける距離が伸びる
- 転びにくくなる
- 外出しやすくなる
- 買い物へ行ける
- 旅行へ行ける
- 趣味を続けられる
- 友人と会える
- 社会とのつながりを保ちやすくなる
つまり、 身体を動かすことは、 「生活そのもの」を維持するための手段 とも言えるのです。
健康寿命を支える5つの土台
- 歩く機会を減らさない
- 座りっぱなしを避ける
- 十分な栄養を摂る
- 筋力を維持する
- バランス能力を保つ
これらについては、 シリーズ最終回で詳しくご紹介します。
健康寿命は、ある日突然短くなるわけではありません
健康寿命は、 突然失われるものではありません。
多くの場合、 小さな変化の積み重ねによって少しずつ短くなっていきます。
- 歩く速度が遅くなった
- 立ち上がる時に手を使うようになった
- 外出回数が減った
- 階段を避けるようになった
- 転ぶことが怖くなった
これらは、 単なる「年齢のせい」ではなく、 身体からのサインかもしれません。
だからこそ、 早い段階でその変化に気付き、 身体を動かし続けることが重要です。
次回予告
健康寿命が短くなる背景には、 要支援になる前の小さな変化があります。
2025年国民生活基礎調査では、 要支援になる主な原因として 「高齢による衰弱」 「関節疾患」 「骨折・転倒」 が上位となっています。
次回は、 「要支援になる主な原因」 について、 最新データをもとに詳しく解説します。
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