変形性膝関節症でも長く歩き人生を楽しむ|要支援・要介護を防ぐ膝の運動|札幌 琴似
2026/07/27
変形性膝関節症 全5回シリーズ・第5回 | 理学療法士が文献ベースで解説
変形性膝関節症の治療目標は、膝の痛みをゼロにすることだけではありません。買い物、旅行、仕事、趣味を続け、自分の生活を守ることです。薬、注射、手術が必要な場面はありますが、その効果を日常生活へつなげ、将来も歩き続けるためには、自分に合った運動を無理なく続ける仕組みが必要です。
監修:リハビリジム プライズネス(理学療法士) / 最終更新日:2026年7月25日 / 読了:約15分
痛みの強い時期には活動を調整する必要があります。しかし、長期間の不活動は筋力・体力・自信を低下させます。できる運動から始め、生活範囲を守ることが大切です。
変形性膝関節症は、画像だけで将来が決まる病気ではありません。薬や注射は痛みを和らげ、手術は傷んだ関節面を整える大切な治療です。しかし、筋力、持久力、バランス、歩行習慣を作るのは運動です。治療を「歩ける生活」へつなげることが、最も大切です。
このシリーズでお伝えしてきたこと
第2回 変形性膝関節症の中核治療は、教育と運動療法です。
第3回 薬、注射、サプリメントにはそれぞれ役割と限界があります。
第4回 手術を受けても、筋力や活動量は運動で取り戻す必要があります。
第5回 改善した力を、何年も維持できる生活習慣へ変えていきます。
最も避けたいのは「痛いから動かない」が長く続くこと
痛みが強い日に活動量を調整することは必要です。しかし、何週間、何か月も動かない状態が続くと、膝だけでなく全身の筋力、心肺機能、バランス、歩く自信が低下します。
↓
外出や運動を控える
↓
脚力と持久力が低下する
↓
同じ距離でも疲れ、膝への負担が増える
↓
さらに外出を避ける
この悪循環を断つには、痛みが完全に消えるのを待つのではなく、現在の状態で可能な運動へ調整することが重要です。歩くと痛い時期には、自転車、椅子での筋力トレーニング、水中運動などへ切り替える方法があります。
運動の効果は「続けている間」に保たれやすい
運動療法には、痛みや身体機能を改善する効果があります。一方で、運動をやめて活動量が元へ戻ると、得られた筋力や持久力も徐々に失われます。長期追跡研究では、自宅運動への取り組みと日常の身体活動を維持できた人ほど、痛みや身体機能の長期成績が良好でした。[7]
これは「毎日つらい運動を続けなければならない」という意味ではありません。週や季節によって運動量を調整しながら、完全にゼロになる期間を短くすることが大切です。
筋トレだけ、歩くだけではなく、4つを組み合わせる
2025年にBMJへ掲載されたネットワークメタ解析では、さまざまな運動が痛みや身体機能に有効で、特に有酸素運動が複数の評価項目で良好な結果を示しました。ただし、どの運動が全員に最適かを一つに決めることはできず、研究の多くは短期成績です。[5]
立ち上がり、階段、膝の安定性を支えます。
歩き続ける体力と疲れにくさを高めます。
転倒への不安を減らし、屋外歩行を支えます。
膝が伸びにくい、曲がりにくい状態を整えます。
例えば、週2回の筋力トレーニングに、短時間の歩行または自転車、片脚立ちなどのバランス練習、膝伸展と股関節周囲のストレッチを組み合わせます。内容は痛み、年齢、持病、生活目標に合わせて変更します。
痛みが増えた日の調整方法
運動を続けていると、痛みが強い日や腫れが気になる日があります。そのたびに「運動は膝に悪い」と判断して完全に中断すると、継続が難しくなります。痛みの反応を見ながら、次のように調整します。
- 軽い違和感 フォームを確認し、負荷を少し下げて継続する。
- 運動後に痛みが残る 回数、重さ、歩行時間のいずれかを20〜30%減らす。
- 腫れや熱感が強い 負荷運動を休み、膝に衝撃の少ない運動へ切り替える。
- 急な激痛、ロッキング、著しい腫れ 自己判断で続けず、医療機関へ相談する。
大切なのは、痛みを我慢することでも、痛みがあるたびに全てをやめることでもありません。膝の反応を見ながら「続けられる量」を探します。
続けるためには、意思よりも仕組みが必要です
運動が続かないのは、意志が弱いからとは限りません。内容が難しすぎる、痛みが不安、効果が分からない、時間が決まっていない、相談相手がいないなど、複数の理由があります。
① 曜日と時間を決める
② 10分でも実施したら記録する
③ 「旅行へ行く」など生活目標と結びつける
④ 痛い日の代替メニューを準備する
⑤ 定期的に筋力や歩行を測る
⑥ 一人で難しい時は専門家や家族の支援を使う
長期的な運動継続を高める方法については、研究結果にばらつきがありますが、個別評価、本人が選択に参加すること、定期的なフォロー、行動目標の設定などが重要と考えられています。[8][9]
体重管理は「膝のためだけの減量」ではありません
体重が多い方では、適切な体重管理によって歩行時の膝への負担を減らせる可能性があります。ただし、高齢者が食事だけで急激に体重を落とすと、筋肉まで失う危険があります。
減量が必要な場合も、たんぱく質や総エネルギーを不足させず、筋力トレーニングと組み合わせることが大切です。体重の数字だけでなく、筋力、歩行能力、体調を一緒に確認します。
本当のゴールは、検査結果ではなく生活です
膝の曲がる角度や筋力の数値は大切です。しかし、患者さんが本当に取り戻したいのは、検査値ではなく生活ではないでしょうか。
・家族と温泉旅行へ行く
・スーパーまで自分で歩く
・冬も転倒を恐れず外出する
・庭仕事やスポーツを続ける
・家族にできるだけ頼らず生活する
運動の内容は、この目標から逆算します。旅行が目標なら長時間歩行と階段、買い物なら荷物を持った歩行、冬の外出ならバランスと滑りやすい環境への対応が必要です。
第5回:膝の治療目標は、痛みをゼロにすることだけではありません
膝の痛みを減らすことは重要です。しかし、痛みが完全に消えるまで外出や趣味を止めていると、筋力と体力が落ち、再び始めることが難しくなります。治療の本当の目標は、自分の生活を守ることです。
・自分で買い物へ行く
・地下鉄やバスを利用する
・家族と旅行する
・仕事、庭、スポーツを続ける
・転倒を恐れず外出する
・身の回りのことを自分で行う
関節疾患は、要支援状態につながる大きな原因
厚生労働省の2025年国民生活基礎調査では、要支援者が介護を必要になった主な原因として、関節疾患は14.8%でした。2022年調査では19.3%で第1位でした。ここには膝関節症だけでなく、股関節症、関節リウマチ、腰痛症なども含まれます。
それでも、関節の痛みと移動能力の低下が、自立生活を失う重要な入口であることは明らかです。
↓
外出を控える
↓
筋力・持久力が落ちる
↓
立ち上がり、階段、買い物が難しくなる
↓
支援が必要になる
長く歩くためには「膝だけ」では足りない
長く歩くためには、大腿四頭筋だけでなく、股関節、足関節、体幹、心肺機能、バランス、視力、転倒への自信が必要です。さらに、歩いて行きたい場所や会いたい人がいることも、活動を続ける力になります。
歩けるようになることで、外出、交流、役割が戻り、それがさらに活動量を高めます。
12週間で作りたい「歩ける生活」の土台
すべての方に同じ運動処方が適するわけではありませんが、相談後の進め方は次のように整理できます。
- ① 第1段階:状態を知る 痛み、腫れ、可動域、筋力、歩行、生活目標を確認します。
- ② 第2段階:痛みを管理しながら動く 膝への衝撃が少ない方法で、筋力と有酸素運動を始めます。
- ③ 第3段階:負荷を上げる 回数、重さ、速度、歩行時間を段階的に増やします。
- ④ 第4段階:生活動作へつなぐ 階段、屋外、買い物、趣味に近い課題を練習します。
- ⑤ 第5段階:自分で続ける仕組みを作る 定期評価、運動日、外出予定を決め、再発時の調整方法を身につけます。
歩数だけを増やせばよいわけではありません
歩数は分かりやすい指標ですが、痛みが強い方が急に歩数だけを増やすと、膝の反応が悪化することがあります。自転車や水中運動で持久力を補い、筋力を高め、歩行量を少しずつ広げる方法もあります。
重要なのは、昨日より多く歩くことではなく、数か月後に生活範囲が広がっていることです。
数値と生活の両方を確認する
膝伸展筋力、5回立ち上がり、歩行速度、TUG、6分間歩行、体重、歩数
生活の変化
買い物へ行けた、外食できた、旅行へ行けた、翌日に疲れが残りにくい、外出への不安が減った
筋力が上がっても生活が変わらなければ、痛みへの恐怖、交通、靴、聴力、気分など別の障壁が残っている可能性があります。反対に、数値の変化が小さくても、歩き方や環境を工夫して外出できれば、大きな改善です。
困ったときに早めに相談することも、長く歩くための技術
- ✓痛みが増えたため、数週間ほとんど動いていない
- ✓以前より歩く速度と距離が落ちた
- ✓注射の間隔が短くなっている
- ✓階段や立ち上がりで手すりが必要になった
- ✓手術後に運動をやめ、再び筋力が落ちた
- ✓旅行や外出を諦め始めている
これらは「もっと悪くなってから相談する」必要はありません。早い段階で運動内容を調整する方が、生活範囲を守りやすくなります。
最後に:膝を守るために、人生を小さくしない
変形性膝関節症は、画像を消すことが難しい慢性疾患です。しかし、運動によって痛み、筋力、歩行、活動量を変え、生活を守ることはできます。
長く歩き、会いたい人に会い、行きたい場所へ行くために、膝へ適切な負荷をかけ続けるのです。
リハビリジム プライズネスでできること
「痛みがあるから何もできない」ではなく、「今の状態なら何ができるか」を一緒に考えます。膝伸展筋力、歩行、姿勢、足圧、バランスを測り、買い物、旅行、仕事、趣味など、人生の目標から逆算した運動を提案します。
参考文献
1. 厚生労働省. 2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況.
2. 厚生労働省. 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況.
3. Bannuru RR, et al. OARSI guidelines for the non-surgical management of knee, hip, and polyarticular osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage. 2019;27:1578-1589. PMID: 31278997
4. Raposo F, et al. Effects of exercise on knee osteoarthritis: A systematic review. Musculoskeletal Care. 2021;19:399-435. PMID: 33666347
5. Yan L, et al. Comparative efficacy and safety of exercise modalities in knee osteoarthritis: systematic review and network meta-analysis. BMJ. 2025;391:e085242. DOI: 10.1136/bmj-2025-085242
6. Van Ginckel A, et al. Effects of long-term exercise therapy on knee joint structure in people with knee osteoarthritis. Semin Arthritis Rheum. 2019. PMID: 30392703
7. Pisters MF, et al. Exercise adherence improving long-term patient outcome in patients with osteoarthritis of the hip and/or knee. Arthritis Care Res. 2010;62:1087-1094. PMID: 20235201
8. Cinthuja P, et al. Effective interventions to improve long-term physiotherapy exercise adherence among patients with lower limb osteoarthritis: a systematic review. BMC Musculoskelet Disord. 2022;23:147. DOI: 10.1186/s12891-022-05050-0
9. Nicolson PJA, et al. Interventions to increase adherence to therapeutic exercise in older adults with low back pain and/or hip/knee osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2017;51:791-799. PMID: 28087567
10. Smith KM, et al. What are the unsupervised exercise adherence rates in people with knee osteoarthritis? Musculoskelet Sci Pract. 2023. PMCID: PMC10462806
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