老化を遅らせるために本当に必要なこと|身体・心・社会を一緒に整える|札幌 琴似
2026/07/21
老化とフレイル 全5回シリーズ・最終回 | 理学療法士が文献ベースで解説
老化対策というと、筋トレ、たんぱく質、脳トレ、サプリメントなど、一つの方法に注目しがちです。しかし、ここまで見てきたように、老化は筋肉だけでも、脳だけでも、心だけでもありません。身体が動くこと、意欲が生まれること、社会の中に自分の場所があることが互いに影響し、健康な老化を支えます。最終回では、最新研究をもとに「結局、何を優先すべきなのか」を整理します。
監修:リハビリジム プライズネス(理学療法士) / 最終更新日:2026年7月21日 / 読了:約15分
DNAメチル化などの老化時計が変化しても、寿命が延びたことや、すべての臓器が若返ったことを意味しません。NMN、ラパマイシン、メトホルミン、老化細胞除去薬などは研究されていますが、健康な一般の方が自己判断で使い、寿命や健康寿命が延びると証明された段階ではありません。本記事では、現在、人を対象とした研究で比較的根拠が強い方法を中心に解説します。
第5回:老化対策は、一つの方法では完成しない
身体的フレイルには筋力と活動量、心理的フレイルには意欲と感情、社会的フレイルには交流や役割が関係します。しかし、実際の生活では三つを切り離せません。
↓
外出への不安が減る
↓
人に会う・趣味へ行く
↓
楽しみと役割が戻る
↓
次の予定ができる
↓
活動量・睡眠・食欲が整う
↓
さらに身体が動きやすくなる
反対に、痛み、低栄養、孤独、聴力低下などが重なると、同じ循環が悪い方向へ回ります。したがって、健康な老化の実践では、原因を一つに決めるのではなく、どこから悪循環が始まり、何が回復を妨げているかを見つける必要があります。
病気や転倒、暑さ、入院などの負担が加わっても、生活を大きく崩さず、崩れても元の生活へ戻れる予備力を複数の方向から持つことです。
2025年のDO-HEALTH研究:老化時計は生活介入で動くのか
2025年にNature Agingで報告されたDO-HEALTH試験の事後解析では、70歳以上の777人を対象に、ビタミンD、オメガ3脂肪酸、自宅運動がDNAメチル化による生物学的老化指標へ与える影響が検討されました。[1]
・ビタミンD 2,000 IU/日
・オメガ3脂肪酸 1g/日
・自宅での簡単な運動 30分×週3回
・介入期間 3年間
オメガ3単独では、PhenoAge、GrimAge2、DunedinPACEという複数の老化時計で小さな保護効果がみられました。また、PhenoAgeでは三つの介入に相加的な効果が認められました。変化量は、3年間でおよそ2.9〜3.8か月相当でした。
老化時計には世界共通の基準がなく、指標によって結果が異なります。対象は比較的健康で活動的なスイスの高齢者で、長期的な寿命や病気の予防につながるかも不明です。
この研究で重要なのは、サプリメントを買えば老化が止まるという点ではありません。栄養状態、身体活動、欠乏の補正を組み合わせた生活介入が、細胞レベルの老化指標にも影響する可能性を、ランダム化試験のデータから示したことです。
2026年の研究:生物学的老化と身体機能は関係するが、同じものではない
2026年に同じDO-HEALTHデータから報告された研究では、平均74.9歳の2,152人を3年間追跡し、期間中に浸潤がんを発症した人と、発症しなかった人の身体機能と生物学的老化が比較されました。[2]
がんを発症した人では、5回立ち上がりにかかる時間の悪化と握力低下が大きく、発症前の時点で一部のDNAメチル化時計が3.5〜6.8か月程度進んでいました。
これは観察的な二次解析であり、生物学的老化ががんを起こしたと証明するものではありません。ただし、細胞レベルの老化指標と、立ち上がりや握力という実際の身体機能が、完全に別々ではないことを示しています。
2025年のUS POINTER試験:脳は「脳トレだけ」で守れない
2025年にJAMAへ掲載されたUS POINTER試験は、認知機能低下のリスクがある60〜79歳の2,111人を対象とした、2年間の大規模ランダム化試験です。[3]
・中〜高強度の定期的な運動
・MIND食に沿った食生活
・認知的な課題
・社会的な交流
・血圧、脂質、糖代謝など心血管リスクの管理
・仲間や専門家による定期的な支援
全般的認知機能は両群で改善しましたが、構造化された高強度介入群の改善は、自己管理中心の低強度介入群より統計学的に大きい結果でした。1年あたりの認知複合スコアの上昇は0.243 SD対0.213 SDで、群間差は小さいものでした。
したがって、「この介入で認知症を防げた」とはまだいえません。しかし、脳の健康は、パズルや記憶課題だけでなく、運動、食事、血管、社会参加、継続を支える仕組みをまとめて整えることで変化する可能性を示しています。
認知症の約45%は予防・発症遅延の余地があるという意味
2024年のLancet認知症委員会は、認知症に関係する修正可能な要因を14項目に整理し、集団レベルでは約45%の認知症が予防または発症を遅らせられる可能性があると推計しました。[4]
・教育機会の不足
・聴力低下
・高LDLコレステロール
・うつ
・外傷性脳損傷
・運動不足
・糖尿病
・喫煙
・高血圧
・肥満
・過剰飲酒
・社会的孤立
・大気汚染
・視力低下
ここでいう45%は、個人が努力すれば45%の確率で認知症を防げるという意味ではありません。教育、経済、地域環境、医療アクセス、大気汚染など、個人だけでは変えられない要因を含む集団レベルの推計です。
それでも重要なのは、脳の老化が、脳だけの問題ではないことです。血管、聴覚、視覚、運動、うつ、社会的孤立など、身体・心理・社会の要因が脳機能へ影響します。
フレイル改善で、研究上もっとも確かなものは何か
2025年の23件の系統的レビュー、98件の一次研究、計1万8,768人をまとめたレビューでは、身体活動、栄養、複合介入の効果が検討されました。[5]
その結果、筋力トレーニングを含む身体活動を、少なくとも週2回行うことは、フレイルの改善と進行予防に有益でした。栄養介入だけの結果は一定しませんでしたが、筋力トレーニングを含む身体活動と栄養を組み合わせた介入は有効でした。
また、このレビューでは、運動教室の情報を渡したり「運動してください」と助言するだけでは、フレイル改善が確認されていませんでした。身体の状態に合う運動を、実際に行い、継続できる仕組みが必要です。
WHOのICOPE:病気ごとではなく「生活機能」をまとめて診る
WHOのICOPE第2版では、高齢者を病気ごとに分けて診るだけでなく、内在的能力の低下を早く見つけ、本人中心の計画を作ることが推奨されています。[6]
移動能力 歩行、立ち上がり、バランス
活力 体重、食事、エネルギー、低栄養
認知能力 記憶、注意、判断、遂行機能
心理的能力 気分、意欲、不安、ストレス
感覚能力 聴力、視力
さらに、住環境、介護者、経済、交通、社会支援なども確認し、本人が大切にしていることを中心に計画を立てます。
この考え方は、本シリーズで見てきた身体・心理・社会的フレイルをまとめるうえで非常に重要です。病気を一つずつ治療しても、本人の生活が戻らなければ健康な老化とはいえません。
老化を遅らせる7つの柱
- ① 筋力と筋パワーを保つ 足腰だけでなく、立ち上がり、階段、転倒回避に必要な素早い力を練習します。筋力トレーニングは少なくとも週2回を目安に、状態に合わせて負荷を進めます。
- ② 歩行・心肺機能・座位時間を整える 運動時間だけでなく、一日の座りっぱなしを減らし、買い物、家事、階段など日常の活動を保ちます。
- ③ 体重と栄養を守る 高齢者では「痩せること」を優先しすぎず、意図しない体重減少を防ぎます。総エネルギーとたんぱく質を確保し、腎臓・心臓などの病気がある方は主治医の指示を優先します。
- ④ 血管と慢性疾患を管理する 高血圧、糖尿病、脂質、喫煙、肥満、睡眠などは、心臓だけでなく脳・腎臓・筋肉の老化にも関係します。
- ⑤ 聴力・視力・痛みを放置しない 参加したくても聞こえない、見えない、痛い状態では外出できません。社会参加の前提となる感覚と身体症状を整えます。
- ⑥ 意欲を待たず、小さな行動を作る やる気が出るまで待つのではなく、本人に意味のある活動を、成功できる大きさに分けて予定へ入れます。
- ⑦ 人とのつながりと役割を保つ 会う人数を増やすだけでなく、頼れる人、自分を待つ人、自分が担える役割を持ちます。
「全部やる」のではなく、最初の一手を決める
七つの柱を見て、すべて行わなければならないと感じるかもしれません。しかし、フレイルがある方へ多くの課題を一度に渡すと、かえって実行できなくなります。
最初に変えるべき場所は人によって異なります。
・食事が少なく体重が落ちている人は、運動量を増やす前に栄養を守る
・筋力はあるが外出しない人は、目的と社会的な予定を作る
・意欲が低い人は、簡単な課題と成功体験から始める
・会話を避ける人は、うつや認知だけでなく聴力を確認する
・心不全や糖尿病が不安定な人は、主治医と連携して疾患管理を優先する
その人の生活を最も狭くしている要因を見つけ、改善した結果を次の行動へつなげることが重要です。
本当に測るべきものは「生活が広がったか」
筋力、体重、歩数、血圧などの数値は重要です。しかし、最終的には、それらの変化が生活へつながっているかを確認する必要があります。
・膝伸展筋力、握力
・5回立ち上がり、30秒立ち上がり
・歩行速度、TUG、SPPB、6分間歩行
・体重、食事量、歩数、座位時間
・血圧、血糖、脂質など
・一人で買い物へ行けたか
・友人や家族と外出できたか
・趣味や旅行を再開できたか
・疲れたあとに回復しやすくなったか
・自分から次の予定を立てるようになったか
・家庭や地域で役割を持てているか
筋力が10%上がっても生活が変わらない場合は、痛み、恐怖、交通、意欲など、別の障壁が残っています。反対に筋力の変化が小さくても、歩き方や環境を工夫し、外出が再開できれば、その人にとって大きな改善です。
老化は完全に止められない。しかし「老化の結果」は変えられる
年齢とともに、細胞や臓器には変化が起こります。病気や死を完全に避けることはできません。しかし、同じ年齢、同じ病気でも、生活機能や回復力には大きな違いがあります。
老化対策の目標は、若い頃の身体へ戻すことではありません。
体調を崩しても、もう一度その生活へ戻れる。
そのために身体・心・社会の予備力を整えることが、本当の老化対策です。
今日から始める統合セルフチェック
- ✓週2回以上、足腰に負荷がかかる運動を行っている
- ✓半年で意図しない体重減少がない
- ✓血圧・糖尿病・脂質・服薬を定期的に確認している
- ✓聴力・視力・痛みを年齢のせいと放置していない
- ✓以前好きだったことを、今も楽しめている
- ✓週に一度以上、目的のある外出や予定がある
- ✓困ったときに連絡できる人や場所がある
- ✓自分が担う家庭・仕事・地域での役割がある
リハビリジム プライズネスが目指していること
プライズネスでは、筋肉をつけることをゴールにはしていません。筋力、歩行、姿勢、足圧を評価し、その力を本人が大切にしている生活へ戻すことを目標にします。
- 身体を見える化する AI歩行解析、姿勢、足圧、膝伸展筋力、立ち上がりなどを確認します。
- 持病と生活に合わせる 病院での経過や主治医の指示に配慮し、無理のない負荷から始めます。
- 行動と役割へつなげる 買い物、旅行、趣味、家族行事など、本人に意味のある目標へ運動を結びつけます。
- 変化を継続して確認する 数値だけでなく、外出、疲れ、気分、生活範囲がどう変わったかを確認します。
参考文献
1. Bischoff-Ferrari HA, et al. Individual and additive effects of vitamin D, omega-3 and exercise on DNA methylation clocks of biological aging in older adults from the DO-HEALTH trial. Nat Aging. 2025;5:376-385. DOI: 10.1038/s43587-024-00793-y
2. Rösler W, et al. Trajectories of physical function and biological aging in generally healthy older adults with and without incident invasive cancer over a three-year follow-up: findings from the DO-HEALTH study. npj Aging. 2026. DOI: 10.1038/s41514-026-00360-2
3. Baker LD, et al. Structured vs Self-Guided Multidomain Lifestyle Interventions for Global Cognitive Function: The US POINTER Randomized Clinical Trial. JAMA. 2025;334(8):681-691. DOI: 10.1001/jama.2025.12923
4. Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628. DOI: 10.1016/S0140-6736(24)01296-0
5. Money A, et al. Evidence on non-pharmacological interventions for preventing or reversing physical frailty in community-dwelling older adults aged over 50 years: overview of systematic reviews. BMC Geriatr. 2025;25:183. DOI: 10.1186/s12877-025-05768-1
6. World Health Organization. Integrated care for older people (ICOPE): guidance for person-centred assessment and pathways in primary care. 2nd ed. 2024. WHO publication
----------------------------------------------------------------------
リハビリジム プライズネス
〒063-0812
北海道札幌市西区琴似2条3-1-1 チェストオオイビル3階
電話番号 : 011-600-6048
札幌の高齢者向けリハビリジム
札幌で痛みの根本からの改善なら
札幌で病気後の身体をサポート
----------------------------------------------------------------------

