脳トレだけでは足りない本当の認知症予防【札幌・琴似】
2026/07/28
この記事は 第1部「認知症は要介護原因第1位」 の続きです。 まだ読まれていない方は、第1部から読むと理解しやすくなります。
認知症は予防できますか?
完全に防ぐことはできません。 しかし、最新研究では 約45%は発症を遅らせられる可能性 が示されています。
2024年のLancet認知症委員会は、 認知症のリスクには運動不足だけではなく、 運動・食事・血圧管理・糖尿病管理・聴力・視力・社会参加 など複数の要因が関係すると報告しています。 つまり、 脳トレだけでは十分ではなく、 生活全体を整えることが認知症予防の鍵 なのです。
30秒で分かる認知症予防
- 脳トレだけでは認知症予防は不十分
- 運動・食事・血管リスク管理を組み合わせる
- 難聴・視力低下・社会的孤立も重要
- 足腰を守ることは活動量や社会参加を守ることにつながる
認知症の約45%は予防・発症延期できる可能性
2024年に公表されたLancet認知症委員会の報告では、人生の各段階における14の修正可能なリスク因子へ対策することで、世界の認知症の約45%は予防または発症を遅らせられる可能性があると推計されています。
2020年版では修正可能なリスク因子は12項目でしたが、2024年版では新たに「高LDLコレステロール」と「未治療の視力低下」が加わり、14項目となりました。
Lancet認知症委員会 2024
約45%
修正可能な要因に関連すると推計
これは、認知症が「予防できない病気」から「人生を通じてリスクを減らせる可能性のある病気」へと捉え直されていることを意味します。
もちろん、生活習慣を整えれば絶対に認知症にならないわけではありません。年齢、遺伝、脳の病理など、自分では変えられない要因もあります。それでも、変えられる部分へ早くから取り組むことには大きな意味があります。
参考: Lancet Commission:Dementia prevention, intervention, and care 2024
「45%予防できる」という数字の正しい意味
「認知症の45%を予防できる」と聞くと、運動や食事に気をつければ、一人ひとりの発症リスクが45%下がるように感じるかもしれません。しかし、この数字はそのような意味ではありません。
45%を個人の予防効果と誤解しない
45%は、14のリスク因子と認知症との関連、各因子が人口にどの程度存在するか、因子同士の重なりなどをもとに推計した「人口寄与割合」です。特定の運動や食品によって、個人の発症率が一律45%低下することを証明した数字ではありません。
また、リスク因子を完全になくすことは現実には困難です。例えば難聴、高血圧、糖尿病、社会的孤立には、それぞれ医療、生活環境、経済状況、地域の支援体制などが関係しています。
それでも、この推計が重要なのは、認知症のすべてが年齢や遺伝だけで決まるわけではなく、社会全体と個人の双方に取り組める余地があることを示した点です。
Lancetが示した14の修正可能なリスク因子
Lancet認知症委員会では、認知症予防を高齢期だけの課題としていません。若年期、中年期、高齢期を通じて、次の14項目へ対策する必要があるとしています。
若年期
- 教育機会の不足
中年期
- 難聴
- 高LDLコレステロール
- うつ
- 外傷性脳損傷
- 身体活動不足
- 糖尿病
- 喫煙
- 高血圧
- 肥満
- 過度の飲酒
高齢期
- 社会的孤立
- 大気汚染
- 未治療の視力低下
ただし、この区分は「その年代だけに対策すればよい」という意味ではありません。身体活動、血圧、糖尿病、喫煙、聴力、視力、社会参加などは、できるだけ早く気づき、継続的に管理することが重要です。
14項目は互いに独立していません
例えば足腰が弱くなって外出が減ると、身体活動不足だけでなく、社会的孤立、気分の落ち込み、肥満、糖尿病や高血圧の悪化につながる可能性があります。一つの変化が複数のリスク因子へ波及する点が重要です。
WHOが示す認知症予防|一つではなく生活全体を整える
WHOが2026年7月に公表した認知機能低下・認知症のリスク低減ガイドラインでも、認知症予防は単一の方法ではなく、人生を通じた複数の取り組みとして整理されています。
推奨される対策には、身体活動、禁煙、健康的な食事、血圧・糖尿病・脂質の管理、聴力や視力への対応、認知的な刺激、社会活動への参加などが含まれます。
「これだけすればよい」という方法はない
認知症予防において、特定のサプリメント、食品、脳トレ、運動一つだけに頼る考え方は適切ではありません。身体、血管、感覚、心理、社会参加を含む複数の領域へ、無理なく継続的に取り組むことが基本です。
参考: WHO:New guidelines on risk reduction of cognitive decline and dementia(2026)
FINGER研究が示した「複合的な予防」の可能性
認知症予防の代表的な研究の一つが、フィンランドで行われたFINGER研究です。
この研究では、認知機能低下のリスクを持つ60~77歳の1,260人を対象に、2年間にわたり、次の複数の介入を組み合わせました。
- 食事指導
- 有酸素運動と筋力トレーニング
- 認知トレーニング
- 血圧など血管リスクの管理
その結果、一般的な健康助言を受けた対照群と比べて、複合介入群では全般的な認知機能を維持・改善する効果が示されました。
重要なのは、FINGER研究が「筋トレだけ」「脳トレだけ」「食事だけ」を検証した研究ではないことです。認知機能を守るためには、複数のリスクへ同時に取り組む必要があるという考え方を支持しています。
FINGER研究から学べること
認知症予防は「頭の体操」だけではなく、運動、食事、血管の管理、認知的活動を組み合わせて考えることが重要です。また、認知症を発症してからではなく、認知機能が比較的保たれている段階から始める意味があります。
参考: Ngandu T, et al. The FINGER randomized controlled trial. Lancet. 2015.
足腰の衰えから始まる認知機能低下の悪循環
私たちプライズネスでは、認知症予防を考える際に、次の流れを重要な視点として捉えています。
この流れ全体が、一方向の因果関係として証明されているわけではありません。認知機能の初期変化によって、先に歩行速度や活動量が低下する可能性もあります。身体機能と認知機能は双方向に影響し合うと考えるべきです。
しかし、それぞれの要素には研究上の関連が認められています。身体活動不足、社会的孤立、うつ、高血圧、糖尿病などは、Lancetが示した修正可能なリスク因子にも含まれています。
足腰の低下を改善することは、認知症を直接治療することではありません。ただし、歩ける距離が延び、買い物や趣味へ出かけ、人と話し、自分の役割を続けられるようになることは、複数のリスク因子へ同時に働きかける可能性があります。
プライズネスが足腰を重視する理由
運動そのものの効果だけでなく、「外へ出られる」「人に会える」「好きなことを続けられる」という生活の広がりを守るためです。筋力は目的ではなく、その人らしい生活と社会参加を維持するための土台です。
札幌・琴似で実践したい認知症予防
認知症予防では、特別なことを短期間だけ行うより、日常生活の中で継続できる仕組みをつくることが重要です。
1.歩くための筋力とバランス能力を保つ
ウォーキングは有効な身体活動ですが、膝や腰の痛み、筋力低下、ふらつきがある方に「歩きましょう」と伝えるだけでは継続できません。まず、歩くための下肢筋力、股関節の動き、姿勢、バランス、痛みなどを評価する必要があります。
2.有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせる
体調に合わせた歩行、自転車運動などの有酸素運動に加え、脚、臀部、体幹などの筋力トレーニングを組み合わせます。持病がある方や転倒リスクが高い方は、自己流で負荷を上げず、専門職へ相談してください。
3.血圧、糖尿病、脂質を放置しない
運動だけでなく、かかりつけ医のもとで血圧、血糖、LDLコレステロールなどを管理することが重要です。自己判断で薬を中止せず、食事や運動の内容も病状に合わせます。
4.聞こえと見え方の変化をそのままにしない
聞こえにくさや見えにくさは、会話、学習、外出、安全な歩行へ影響します。年齢のせいと決めつけず、必要に応じて耳鼻咽喉科、眼科、補聴器相談などにつなげることが大切です。
5.冬も活動を完全に止めない
札幌では積雪や路面凍結によって、冬の外出が減りやすくなります。転倒を避けることは大切ですが、数か月間ほとんど動かない状態が続けば、筋力、持久力、生活リズム、交流機会が低下する可能性があります。
室内で安全に運動できる場所を活用する、家族や友人と予定を決める、短時間でも定期的に外出するなど、冬も活動をゼロにしない工夫が必要です。
まとめ|認知症予防は「歩ける生活」を守ることから
この記事の重要ポイント
- 認知症の約45%は、14の修正可能な要因に関連すると推計されている
- 45%は、個人の発症率が一律45%下がるという意味ではない
- 脳トレだけでなく、運動、食事、血管管理、聴力・視力、社会参加を組み合わせる
- 足腰の衰えは、活動量や社会参加の低下につながる可能性がある
- 筋力を守る目的は、好きなことや人とのつながりを続けられる生活を守ること
認知症予防は、脳の問題だけを考えることではありません。自分の足で移動し、人に会い、役割を持ち、生活の中でさまざまな刺激を受け続けられる状態を守ることが重要です。
すでに歩きにくさ、ふらつき、膝や腰の痛み、外出回数の減少を感じている場合には、「年齢だから仕方がない」と放置せず、身体機能を一度確認してみてください。
札幌市西区琴似で、足腰の状態を確認しませんか?
リハビリジム プライズネスでは、理学療法士が筋力、歩行、姿勢、バランス、痛みなどを確認し、その方の身体状態と目標に合わせて運動を提案します。
第1部をまだ読んでいない方へ
認知症予防についてよくある質問
Q.脳トレだけで認知症を予防できますか?
脳トレだけで認知症を確実に予防できるとは言えません。認知的な刺激は対策の一つですが、身体活動、食事、血圧・糖尿病・脂質の管理、聴力・視力、社会参加などを組み合わせることが重要です。
Q.認知症予防で一番大切なことは何ですか?
一つだけを選ぶのではなく、複数のリスク因子へ継続して取り組むことです。特に、運動習慣を保ち、生活習慣病を管理し、人との交流や役割を失わない生活を続けることが基本になります。
Q.ウォーキングは認知症予防になりますか?
ウォーキングは身体活動を増やす方法の一つです。ただし、膝や腰の痛み、ふらつき、筋力低下がある場合は、歩く量だけを増やすと継続できないことがあります。身体状態に合わせ、有酸素運動と筋力・バランストレーニングを組み合わせます。
Q.足腰の衰えは認知症の原因になりますか?
足腰の衰えが直接認知症を起こすと断定することはできません。しかし、歩行や外出が減ることで、身体活動不足、社会的孤立、気分の低下など複数のリスクが重なる可能性があります。反対に、認知機能の初期変化が歩行へ現れる場合もあり、両者は双方向に関係すると考えられます。
Q.認知症予防は何歳から始めるべきですか?
何歳からでも取り組む意味があります。認知症のリスクは、若年期の教育、中年期の血圧・脂質・糖尿病・聴力、高齢期の身体活動や社会参加など、人生を通じて積み重なります。症状が出る前から生活全体を整えることが重要です。
この記事を書いた人
成田 悟志|理学療法士・株式会社プライズライフ代表取締役
理学療法士として、急性期病院を中心に脳血管疾患、整形外科疾患、心疾患、がん、救急、訪問リハビリテーションなどを経験。札幌市西区琴似のリハビリジム プライズネスで、病気や加齢により運動へ不安がある方の身体機能と生活の維持を支援しています。
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参考資料・文献
- Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. The Lancet, 2024.
- World Health Organization. Risk reduction of cognitive decline and dementia: WHO guidelines, updated 2026. WHO.
- Ngandu T, et al. A 2 year multidomain intervention of diet, exercise, cognitive training, and vascular risk monitoring versus control to prevent cognitive decline in at-risk elderly people. Lancet. 2015;385:2255–2263.
※本記事は一般的な健康情報であり、個別の診断や治療を目的とするものではありません。認知機能や行動の急な変化、日常生活への支障がある場合は、医療機関、かかりつけ医、地域包括支援センターへご相談ください。
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