高齢者の筋トレで筋肉は増える?10〜14週間の研究と回数の考え方|札幌
2026/10/13
足腰の衰えを研究と評価から考える|第2回
解説:成田 悟志(理学療法士)
リハビリジム プライズネス・札幌市西区琴似
「70代になってからでも、筋肉は増えるのでしょうか?」 「筋トレは、たくさん繰り返すほど効果があるのでしょうか?」
年齢とともに足腰の衰えを感じると、 運動を始めても変わらないのではないか、と不安になることがあります。 しかし、研究では60代・70代でも、 トレーニングによる筋肉サイズの増加が報告されています。
今回は、60歳以上の運動による筋肉の変化をまとめた 2025年の研究レビューから、 高齢者の筋トレ効果と、回数・鍛え方の考え方を解説します。
- 高齢者の筋肉も、トレーニングに反応します。
- 10〜14週間の筋トレで、筋肉サイズの増加が報告されています。
- 回数だけでなく、負荷・種目・動作・回復も大切です。
- 筋肉の変化と、立ち上がり・階段・歩行の変化を一緒に確認します。
1.68研究・1,417人から見えた、高齢者の筋トレ効果
Vincentyらが2025年に発表したレビューでは、 監督下の筋トレや有酸素運動を行った60歳以上の研究を整理し、 MRI・CT・超音波で測定した筋肉サイズの変化をまとめています。 [1]
対象者の94%は60代・70代で、 データの79%は大腿四頭筋に集中していました。
このレビューは、高齢者の筋肉が運動にどう反応するかを知る材料になります。 同時に、全身の筋肉やすべての年代を、 同じ程度に調べているわけではないことも押さえておきたいところです。
このレビューには80代・90代も含まれますが、 データは60代・70代に比べて少なめです。 運動前の状態、体調、持病、回復を確認しながら、 本人に合った負荷を調整します。
2.10〜14週間の筋トレで、筋肉サイズはどのくらい変わった?
10〜14週間の筋トレを行った研究を整理すると、 年代別・筋肉別に次のようなサイズ増加の範囲が報告されていました。 [1]
出典:文献[1]。 数字は10〜14週間の筋トレで報告された、筋肉別のサイズ変化の範囲です。 筋力の増加率、全身の筋肉量の増加率、個人の成功率を示すものではありません。
注目したいのは、60代・70代でも、 筋肉サイズの増加が報告されていることです。 年齢を理由に、筋肉の変化をあきらめる必要はありません。
一方、増加の程度は筋肉やプログラムによって異なります。 自分の身体がどのように反応しているかを、 測定と動作の確認で確かめていくことが大切です。
10〜14週間は、おおよそ2か月半〜3か月半です。 この期間の研究は計画を立てる参考になります。 運動中の反応も確認しながら、一定期間後に筋力や生活動作を再評価しましょう。
3.加齢で減りやすい筋肉ほど、筋トレで増えやすい?
第1回では、加齢による筋肉サイズの減少に部位差があることを紹介しました。 では、減りやすい筋肉ほど、筋トレで増えやすいのでしょうか。
この2つのレビューから、減りやすさと増えやすさが 直接対応するとは判断できません。 それぞれの研究が調べている内容を整理すると、 運動への活かし方が見えてきます。
| 加齢のレビュー(2023年) | 運動のレビュー(2025年) |
|---|---|
| 若年者と高齢者の筋肉サイズを比較 | 高齢者の運動前後のサイズ変化を整理 |
| 約50年の年齢差に相当する変化を推定 | 数週間〜数か月の介入を中心に分析 |
| 加齢による部位差を考える材料 | 運動による部位差を考える材料 |
対象者、測定条件、運動の種類などが異なるため、 減少率の順位を、そのまま増えやすさの順位に置き換えることはできません。
立ち上がり、階段、歩行などで困っている場面を確認し、 必要な筋肉と動作を鍛えます。 その後の変化を再評価することで、運動を本人に合わせて調整できます。
4.筋トレの効果は、回数だけでは決まらない
このレビューの60〜79歳の大腿四頭筋の筋トレデータでは、 反復回数が増えるほど追加の筋肥大が大きくなる、 という関係は確認されませんでした。 [1]
この結果は、運動を考えるときに 回数以外の内容にも目を向ける必要があることを示唆します。 少ない回数が全員に最適という意味ではなく、 負荷や種目、動作、回復も合わせて考えます。
同じ10回でも、身体への刺激は違う
軽く動かす10回と、負荷をかけて姿勢を保つ10回では、 運動の内容が異なります。 また、狙った筋肉を使えているか、ほかの部位で代償していないかも確認します。
| 確認する項目 | 考え方 |
|---|---|
| 負荷 | 現在の力と体調に合った重さ・抵抗か |
| 種目 | 目標に必要な筋肉や動作に合っているか |
| 動かす範囲 | 関節の状態に合わせて、必要な範囲を動かせているか |
| 姿勢・代償 | 腰や身体の反動に頼りすぎていないか |
| 回数・セット数 | 動作の質と疲労を確認しながら調整できているか |
| 回復 | 翌日の痛みや疲労が、生活に影響していないか |
この表は個別指導で確認する項目の例です。 レビューから全員共通の最適な回数や負荷を決めるものではありません。
「100回できるようになった」という変化に加えて、 必要な筋肉が働き、目標の動作が良くなっているかを見ていきましょう。
5.太ももだけでなく、臀筋と歩く力にも目を向ける
2025年の運動レビューでは、 大腿四頭筋のデータが多くを占めています。 太ももの研究結果を、臀筋群や体幹の筋肉へ そのまま当てはめることはできません。
個別指導では、膝を伸ばす力が比較的保たれていても、 股関節を伸ばす力や横方向に支える力に課題がある方を見かけます。 太もも、臀筋、体幹、実際の動作を組み合わせて確認することが大切です。
| 生活の目標 | 個別評価に応じた運動の例 |
|---|---|
| 椅子から楽に立ちたい | 立ち上がり練習、膝伸展・股関節伸展の運動 |
| 歩行中の左右の揺れを減らしたい | 股関節外転の運動、支持物を使った重心移動 |
| 段差を安心して上りたい | 高さを調整したステップ練習 |
| 足を踏ん張りやすくしたい | 状態に合わせた踵上げ、足部の支持の練習 |
この表は個別指導の例であり、 レビューで各運動の効果が直接比較されたものではありません。 歩行の揺れなどには、筋力に加え、痛み・感覚・バランスなども関わります。
6.高齢者の筋トレは週何回?続け方の目安
WHOの2020年ガイドラインでは、 主要な筋群を鍛える活動を週2日以上行うことを推奨しています。 [2]
高齢者には、機能的なバランスと筋力を重視した 多要素の身体活動を週3日以上行うことも勧めています。
週3日のすべてで、重い筋トレを行うという意味ではありません。 筋力を鍛える日と、バランスや生活動作を練習する日など、 内容と回復を考えて組み合わせます。
これらは一般的な活動の目安です。 運動に慣れていない場合は少量から始め、 体調や回復を見ながら、頻度・時間・負荷を段階的に増やします。
持病や関節痛、術後の制限がある場合は、 医師の指示と現在の身体機能に合わせて調整します。
7.筋肉の変化を、生活の改善につなげる計画
トレーニングの目標は、筋肉を大きくすることに加えて、 できることを増やし、続けたい生活を支えることです。
-
現在の状態を評価する
筋力、関節の動き、痛み、立ち上がり、歩行、活動習慣を確認します。 -
生活の目標を決める
「近所のお店まで歩く」「階段を楽に上る」など、 本人が変えたい場面を具体的にします。 -
目標に合った運動を選ぶ
必要な筋肉と動作に合わせて、種目・負荷・頻度を決めます。 -
再評価の時期と項目を決める
同じ条件の筋力測定や立ち上がり、歩行などで変化を確かめます。
10〜14週間の研究は、一定期間の計画を立てる参考になります。 その間も痛みや疲労、動作の変化を確認し、 必要に応じて内容を調整します。
「扱える重さが増えた」に加えて、 「椅子から立ちやすくなった」「外出の不安が減った」 「歩ける距離が伸びた」などの変化も、一緒に確認しましょう。
8.年齢だけであきらめず、自分に合った鍛え方を
2025年のレビューでは、 60代・70代でも筋トレによる筋肉サイズの増加が報告されていました。 高齢者の筋肉にも、運動に反応する力があります。
その変化を生活に活かすためには、 回数だけでなく、鍛える部位、負荷、身体の使い方、回復を考えることが大切です。
今の状態を確認し、目標を決め、運動を続け、その変化を測る。 この積み重ねが、これからの足腰づくりにつながります。
よくある質問
70代でも筋トレで筋肉は増えますか?
2025年のレビューでは、70代の10〜14週間の筋トレで、 調べられた筋肉ごとに約1〜12%のサイズ増加が報告されています。 筋肉やプログラムによって反応は異なり、 全員の全身の筋肉が同じ割合で増えるという意味ではありません。
筋トレの効果は、どのくらい続けて確認すればよいですか?
今回のレビューでは、10〜14週間の筋トレによる 筋肉サイズの変化が整理されています。 おおよそ3か月は再評価の参考になりますが、 途中の筋力、動作、痛み、疲労も確認しながら進めます。
加齢で減りやすい筋肉ほど、筋トレで増えやすいですか?
この2つのレビューだけでは判断できません。 加齢の比較と運動介入は研究条件が異なるため、 減少率の順位を、そのまま増えやすさの順位には置き換えられません。 本人に必要な部位を評価し、運動後の反応を確かめます。
筋トレは回数を増やすほど効果がありますか?
回数だけでは判断できません。 2025年のレビューの60〜79歳の大腿四頭筋データでは、 反復回数の増加に伴う追加の筋肥大は確認されませんでした。 負荷や種目、動作、回復も合わせて考えます。
高齢者の筋トレは週何回が目安ですか?
WHOの一般的な目安は、 主要な筋群を鍛える活動を週2日以上です。 高齢者には、バランスと筋力を重視した 多要素の身体活動を週3日以上勧めています。 体調や持病に合わせ、少量から段階的に始めます。
太ももの筋トレだけで、歩く力は十分に鍛えられますか?
歩く動作には、太ももに加え、臀筋、体幹、 足首周囲の筋肉やバランスなども関わります。 膝の筋力だけでなく、股関節の力や実際の歩行を確認して、 必要な運動を組み合わせます。
「もう年だから」とあきらめる前に、足腰づくりをご相談ください
札幌市西区琴似のリハビリジム プライズネスでは、 理学療法士が筋力測定やAI姿勢・歩行解析などを活用し、 身体の状態と生活の目標に合わせた個別運動指導を行っています。
「自分に必要な運動を知りたい」 「階段や立ち上がりを楽にしたい」 「病院でのリハビリ後も運動を続けたい」など、 ご希望をお聞かせください。
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何歳になっても、自分の足腰で好きなことを。
参考文献
-
Vincenty CS, et al.
Human skeletal muscle-specific hypertrophy with exercise training and aging:
a comprehensive review.
J Appl Physiol. 2025;139:58–69.
doi:10.1152/japplphysiol.00892.2024.
論文全文を確認する -
WHO.
WHO Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour.
2020. Executive summary.
ガイドラインを確認する -
Naruse M, Trappe S, Trappe TA.
Human skeletal muscle-specific atrophy with aging: a comprehensive review.
J Appl Physiol. 2023;134:900–914.
doi:10.1152/japplphysiol.00768.2022.
加齢による筋肉の部位差を扱った論文を確認する
この記事は一般的な情報の提供を目的としています。 研究の平均値は、個人の変化やトレーニング効果を保証するものではありません。
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