加齢で減りやすい筋肉は?太もも33%・ふくらはぎ6%の差と臀筋の評価|札幌
2026/10/12
足腰の衰えを研究と評価から考える|全2回
加齢で減りやすい筋肉は?太もも33%・ふくらはぎ6%の差と臀筋の評価|札幌
解説:成田 悟志(理学療法士)/リハビリジム プライズネス・札幌市西区琴似
「最近、階段がつらい」「歩くと身体が左右に揺れる」。同じ足腰の衰えでも、弱くなっている場所は人によって違います。
筋肉は年齢とともに一様に減るのでしょうか。研究では、筋肉の場所によって、大きさの変化に差があることが示されています。
ただし、筋肉の「大きさ」と「力」、そして「歩く・立つ能力」は別です。研究の平均値と、目の前の人の評価を組み合わせることが大切です。
1.太もも33%、ふくらはぎ6%。この数字は何を表す?
Naruseらの2023年のレビューは、47件の横断研究を整理したものです。若年者982人と高齢者1,003人、平均年齢が約25歳と約75歳の集団を比較し、約50年の年齢差に相当する筋肉サイズの変化を推定しています。[1]
出典:文献[1]。異なる年齢集団の比較から推定した約50年相当のサイズ差です。個人の将来の減少率や筋力低下率を示す数字ではありません。
| 部位・筋肉 | 約50年相当のサイズ減少の推定 |
|---|---|
| 大腿直筋(太もも前) | 約33% |
| 外側広筋(太もも前の外側) | 約30% |
| 大腰筋(股関節を曲げる深部の筋肉) | 約29% |
| 大腿四頭筋全体 | 約27% |
| 脊柱周囲の筋群 | 約24% |
| ハムストリングス(太もも裏) | 約19% |
| 下腿三頭筋全体 | 約14% |
| ヒラメ筋(ふくらはぎの奥) | 約6% |
文献[1]の報告値を丸めて掲載。筋群全体と、その一部を構成する筋肉を含むため、各行は独立した筋群ではありません。
同じ人を50年追跡した数字ではなく、若年集団と高齢集団の差から推定した値です。活動量や性別、測定方法などにも違いがあります。
2.なぜ筋肉ごとに減り方が違う?
レビューでは、日常の活動量、筋線維のタイプ、性別、加齢の時期などが影響する可能性を挙げています。[1]
たとえば、ヒラメ筋は立っているときにも働く筋肉です。普段どのように使われるかを考えることは、筋肉の違いを理解する手がかりになります。ただし、「よく使うから減らない」と原因を一つに決めることはできません。
3.「中枢部から筋力が落ちる」という説明と矛盾する?
ここでいう「中枢部」は、神経の中枢ではなく、体幹や股関節周囲など身体の中心に近い部分を指します。
今回の結果だけで、この説明を肯定も否定もできません。大腰筋や脊柱周囲のサイズ減少は、中心に近い筋肉へ注目する考え方と整合する面があります。一方、大腿直筋や外側広筋でも大きな減少が推定されています。
そもそも、このレビューは「筋力がどの順番で落ちるか」を調べた研究ではありません。位置だけでなく、筋肉ごとの役割や本人の活動を確認することが実践では役立ちます。
4.お尻の筋肉は、この研究に入っている?
大腰筋や股関節内転筋群の数字を、そのまま臀筋群の数字として扱うこともできません。[1]
「臀筋のデータがない」ことと「臀筋は弱くならない」ことは違います。研究に載っていない部位も、生活での役割を考えて評価する必要があります。
5.臨床では「臀筋が弱く、四頭筋は比較的保たれる」と感じるのはなぜ?
高齢の方を評価すると、膝を伸ばす力に比べて、股関節を伸ばす力や横方向に支える力の弱さが目立つことがあります。これは現場での観察であり、一般集団の減少率の順位を示すデータではありません。
筋肉の大きさと、発揮できる力は一致しません
筋力には筋肉量だけでなく、神経による働かせ方、痛み、関節の状態、測定姿勢なども関わります。サルコペニアの欧州合意でも、筋力と筋肉量・質、身体機能は区別して評価されています。[2]
「比較的保たれている」の基準も確認します
本人の臀筋と比べて保たれているのか、同年代の基準と比べて十分なのかは別です。また、徒手筋力検査で良好に見えても、筋力計で測ると差が分かる場合があります。
膝伸展の測定は、大腿四頭筋が協調して発揮する力を見るものです。大腿直筋だけのサイズ減少と直接照合して、矛盾を判断することはできません。
活動習慣、関節痛、動作の代償などにより、特定の筋肉の弱さが目立つ可能性があります。原因は決めつけず、股関節伸展・外転の評価や歩行観察で確かめます。
6.足腰の衰えは「太ももの筋力」だけで判断しない
| 確認したいこと | 評価の例 |
|---|---|
| 膝を伸ばす力 | 大腿四頭筋の筋力測定・左右差 |
| お尻・股関節周囲の力 | 股関節伸展・外転、代償動作の確認 |
| 立ち上がる能力 | 椅子からの立ち上がりと身体の使い方 |
| 歩行中の安定性 | 歩く速さ、骨盤・体幹の動き、方向転換 |
| 本人が困っている生活場面 | 階段、買い物、外出時の疲れや不安 |
この表は研究の検査手順ではなく、個別運動指導に向けた評価の例です。「どこが弱いか」と「何ができるようになりたいか」をつなげて、運動を選びます。
2025年のレビューから、高齢者の筋肉が運動に反応することと、回数を増やすだけでは判断できない理由を解説します。
第2回:高齢者の筋トレ効果と回数の考え方を読む →よくある質問
加齢で特に減りやすい筋肉はどこですか?
2023年のレビューでは、大腿直筋や外側広筋、大腰筋などで筋肉サイズの大きな減少が推定されています。ただし調べられた筋肉の範囲内の結果で、すべての人に同じ割合で起こるわけではありません。
筋力は身体の中枢部から落ちるのでしょうか?
股関節周囲や体幹の弱さに注目することは大切ですが、加齢による低下を一律の順番で説明することはできません。このレビューは筋力が落ちる順序を検証した研究ではありません。
この加齢のレビューに臀筋群は含まれていますか?
大臀筋・中臀筋・小臀筋は、2023年のレビューの筋群別比較には含まれていません。臀筋が保たれる、または最も減るという結論は、この論文からは出せません。
太ももの筋力があれば、お尻の筋力も十分ですか?
膝を伸ばす力と、股関節を伸ばす・横に支える力は別に確認する必要があります。膝の筋力が比較的保たれていても、臀筋の弱さや歩行時の不安定さがある場合があります。
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札幌市西区琴似のリハビリジム プライズネスでは、理学療法士が筋力測定やAI姿勢・歩行解析などを活用し、身体の状態と生活で困っている動作を確認します。
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参考文献
- Naruse M, Trappe S, Trappe TA. Human skeletal muscle-specific atrophy with aging: a comprehensive review. J Appl Physiol. 2023;134:900–914. doi:10.1152/japplphysiol.00768.2022. 原文・抄録を確認する
- Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis. Age Ageing. 2019;48:16–31. doi:10.1093/ageing/afy169. 原文・抄録を確認する
この記事は一般的な情報の提供を目的としています。研究の平均値は個人の効果を保証するものではありません。
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