座りっぱなし対策は「1時間に5分歩く」が最適|約2万人の研究を解説
2026/10/07
座りっぱなし対策は「1時間に1回・5分歩く」が最適解|約2万人の最新研究を理学療法の視点で解説
座りっぱなしの害を減らすには、「1時間ごとに5分、ラクなペースで歩く」のが続けやすさと効果のバランスが最も良い——。2026年に英国スポーツ医学誌(British Journal of Sports Medicine)で発表された、約1万9千人規模の研究がこう結論づけました。2週間続けた人は疲れが減り、気分が良くなり、仕事のパフォーマンスも落ちませんでした。
この記事のポイント
- 約1万9千人が参加した、日常生活の中で行う大規模研究
- 5分間の歩行休憩で、疲労感・気分が3つの頻度すべてで改善
- 30分ごとは効果最大だが続けにくい、120分ごとは続けやすいが効果小
- 「60分ごと」が最もバランスが良く、参加者の約半数が選んだ
- 休憩を入れても仕事のパフォーマンスは下がらなかった
なぜ「座りっぱなし」が問題なのか
高所得国の大人は、1日のうち平均11〜12時間を座ったり横になったりして過ごしているとされます。長時間の座位は、さまざまな慢性疾患や死亡リスクの上昇、メンタルヘルスの悪化との関連が報告されており、公衆衛生上の大きな課題になっています。
これまで実験室の研究では「こまめに立ち上がって動く」ことの有効性が示されてきました。しかし、実際の生活や職場でそれが続けられるのか、どのくらいの頻度が良いのかは分かっていませんでした。今回の研究は、まさにその疑問に答えるものです。
研究の概要:どんな人が、何をしたのか
米コロンビア大学のKeith M. Diaz氏らの研究チームは、米国の公共ラジオ局NPRのポッドキャスト企画「Body Electric Challenge」の参加者を対象に調査を行いました。年齢・職業・働く環境はさまざまです。
- 方法:座っている時間の合間に、心地よいペースで5分間歩く
- 頻度:「30分ごと」「60分ごと」「120分ごと」の3つから自分で選択
- 流れ:いつも通りの生活を7日間記録 → 歩行休憩を14日間実施
- 評価:毎日のアンケートで疲労感・気分・仕事のパフォーマンスを記録。続けやすさ(実行可能性)、受け入れやすさ、適切さも5段階で評価(3を超えると「実用性あり」)
登録者のうち約6割(11,484人)が実際に取り組みを開始しました。
参加者が選んだ休憩の頻度
結果:30分・60分・120分ごと、どれが良かった?
どの頻度でも、疲労感と落ち込んだ気分が減り、前向きな気分が増えるという有意な改善が見られました。そして、休憩の回数が多いほど効果が大きくなる「用量反応関係」も確認されています。
ただし統計的に意味があることと、本人が「良くなった」と実感できるレベル(最小重要差:MID)は別物です。そこで3つの頻度を比べると、次のようになりました。
| 項目 | 30分ごと | 60分ごとおすすめ | 120分ごと |
|---|---|---|---|
| 続けやすさ(実行可能性) | 3.41 | 3.80 | 4.01 |
| 受け入れやすさ | 3.91 | 4.03 | 4.03 |
| 疲労感の軽減 | ○ | ○ | △ |
| 前向きな気分の向上 | ○ | ○ | △ |
| 落ち込んだ気分の軽減 | ○ | △ | △ |
まとめると、30分ごとは効果が一番大きいものの続けるのが大変、120分ごとは続けやすいものの効果は控えめでした。その中間の60分ごとは、120分ごとと同等の受け入れやすさを保ちつつ、3項目中2項目で実感レベルの改善を達成。研究チームはこれを「最もバランスの良い頻度」と評価しています。
仕事の効率は落ちないの?
「仕事中に何度も席を立つと、集中が途切れて効率が落ちるのでは?」——これは職場で運動休憩を取り入れる際の大きな心配ごとでした。
今回の結果では、どの頻度でも仕事のパフォーマンスは下がりませんでした。むしろ平均すると、仕事への取り組み意欲(エンゲージメント)は4〜7%、パフォーマンスは1〜3%と、わずかながら良い方向に変化していました(実感レベルには届かない小さな差です)。
この研究の注意点
⚠ 結果を読むときに知っておきたいこと
- 疲労や気分は本人の自己申告で評価しており、客観的な測定ではありません
- 比較のための「休憩を取らないグループ」はなく、実施前後の比較による観察研究です
- 参加者は白人・女性・高学歴の人が多く、日本人や高齢者にそのまま当てはまるかは未確認です
- 期間が2週間と短く、長期的に続けられるか・体への影響(血糖や血圧など)は今後の研究課題です
今日からできる「1時間5分」の実践法
研究で使われたのは「心地よいペースで5分歩く」という、とてもシンプルな方法です。特別な道具も場所もいりません。続けるためのコツを、リハビリの現場の視点からご紹介します。
- スマホやPCで「50分」のタイマーをセット
キリのいいところで立ち上がれるよう、少し早めに鳴らすのがコツです。 - 立ち上がって5分歩く
トイレや給湯室まで遠回りする、階段を1フロア分使う、家なら部屋の中を往復するだけでもOK。息が上がらない「会話できるペース」で十分です。 - 歩けないときは「その場で動く」
会議中などは、立ったままかかとの上げ下げ(カーフレイズ)や足踏みで代用を。ふくらはぎは血液を心臓に戻すポンプの役割を担っています。※研究で検証されたのは歩行のみです。 - まずは「120分ごと」から始めてもOK
いきなり毎時間が難しければ、続けやすい頻度から始め、慣れたら60分ごとへ。研究でも120分ごとで一定の改善は見られています。
🩺 理学療法士からひとこと
長時間座っていると、股関節の前側や太もも裏が硬くなり、腰痛や膝の不調、姿勢の崩れにもつながります。5分歩く前に、立ったまま軽く背伸びをしたり、お尻を後ろに引いて股関節を動かすと、体がほぐれやすくなります。
膝や腰に痛みがあって歩くのがつらい方は、無理をせず、ご自身に合った動き方を専門家に相談してください。
よくある質問
座りっぱなしの対策には、どのくらいの頻度で休憩するのが良いですか?
今回の研究では、1時間ごとに5分歩くのが、続けやすさと効果のバランスが最も良いという結果でした。30分ごとは効果が大きい反面続けにくく、120分ごとは続けやすい反面効果は控えめでした。
5分の休憩では何をすれば良いですか?
研究では「心地よいペースでの歩行」が用いられました。息が上がるほど速く歩く必要はありません。社内や家の中を歩く、階段を使うなど、身近な方法で大丈夫です。
仕事中に何度も席を立つと、効率が落ちませんか?
研究ではどの頻度でも仕事のパフォーマンスは低下しませんでした。平均ではエンゲージメントが4〜7%、パフォーマンスが1〜3%とわずかに良い方向へ変化していました。
どのくらいの期間続ければ効果を感じられますか?
この研究では2週間の実施で疲労感や気分の改善が報告されています。ただし、より長期的な効果や体の数値(血糖・血圧など)への影響は、今後の研究で確かめる必要があります。
膝や腰が痛くて歩くのがつらい場合はどうすれば良いですか?
痛みがある場合は無理をせず、医師や理学療法士にご相談ください。座ったままできる足首の運動や、痛みの少ない動き方など、体の状態に合わせた方法があります。当ジムでも個別にご提案しています。
参考文献
- Diaz KM, Murdock ME, Serafini MA, et al. Evaluating movement breaks as a public health strategy to mitigate the harms of prolonged sitting: a large-scale pragmatic intervention. Br J Sports Med. 2026;60:1208-1217. doi: 10.1136/bjsports-2025-111221
- BMJ Group プレスリリース(2026年6月)Hourly movement breaks feasible and effective for mitigating sedentary harms
※本記事は論文の内容を一般向けに解説したもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。持病のある方は主治医にご相談のうえ運動を行ってください。
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